<研究の主な成果と課題> まずStep1では,子ども自身(小グループ学習)で教科書を読み,学習内容をキーワードとして抜き出し,図書分類の視点で分類した。次に,キーワードを書き込んだ「分類ワークシート」をもとに,学校図書館で学習内容についての情報を広く,詳細に集めた。更に,それらの情報をもとに,学習課題に取り組んだ。この学習活動では,以下のような成果が見られた。 次にStep2では,「情報ワークシート」を,主に学校図書館で自分の考えを表現する学習に活用した。教師からは資料の数と,異なる分類の資料を使うことを条件として提示した。この学習活動では,以下のような成果が見られた。 更にStep3では,「分類ワークシート」を課題設定のために活用し,子どもが自ら課題を設定し追究する学習を行った。この学習活動では,以下のような成果が見られた。 加えて,授業実践全体を通し,学習する子どもたちに印象的な様子が見られた。一例を次に示す。 シート」を使用する。 ・全体像を書き出した「分類ワークシート」をもとに,詳細な追究課題を設定する。 ・学習の過程では,Step1やStep2での学習を活かし,より詳細な情報を集めて追究したり,複数の異なる分野の図書資料を用いて多面的・多角的にとらえ追究したりする。 【知識の習得】 ・学習内容を分類することで内容について考える。 ・わからないことについて,子ども同士で話し合う。・確認のため,教科書を何度も読み返す。 【見方・考え方】 ・一つの事柄がいくつもの分類に当てはまることから,物事に多面性があることに気付く。 ・同じ事柄でも人によってとらえ方が違うことから,多角的な見方・考え方に気付く。 【学校図書館(情報)の活用】 ・情報の分野を意識しながら学習したり,様々な分野に目を向けて情報を収集したりする。 ・関連する情報(キーワード)をもとに,幅広く,または詳細な資料をさがすスキルを身につける。 ・複数の分野の情報に目を向けて考える。 ・様々な角度から検討して考える。【自ら設定した課題の追究】 ・課題の全体像をつかみ,興味関心を絞り込んで,より詳細な追究課題を設定する。 ・いくつかの分野を関連させて課題を追究する。 ・図書資料や教科書など,様々な資料を自ら調べて,内容についての疑問点を確認している様子。 ・お互いの調べた情報を,対話を通して共有する中で,授業実践後に子どもたちを対象に行った質問紙調査では,特に「分類ワークシート」を活用した学習について,次のような記述が見られた。 これらの記述からは,次のような成果と課題が考えられた。まず,「分類ワークシート」を活用したことで,子どもたちは学習内容を俯瞰したり,図書分類を観点として学習内容を比較・検討したり,物事を多面的にとらえ,多角的な観点から検討したりすることができたと考えられた。しかし一方で,この学習方法のねらいが子どもたちに十分理解されていたか,提示した学習課題が内容理解のために適切であったか,学習内容と評価方法が一致していたか等が課題として考えられた。 これらの授業実践と,実践後のアンケート調査の結果から,学校図書館の図書分類を活用することは,子どもが多面的・多角的な見方・考え方を学ぶ上で有効であると考えられた。また,学校図書館の機能を各教科等の学習で活用することは,子どもたちの主体的な学びを引き出す上で有効であると考えられた。 1年次の授業実践では,子どもたちは概ね,主体的に学んでいる様子であった。また,興味関心を持って学習に取り組んでいる様子であった。しかしその一方で,自らの考えを検証しようとしたり,一つの疑問を解決したあと,更に新たな疑問を持って追究しようとしたりするなど,より深く学びを進めようとする子どもは少なかった。また,主体的に学ぶ学習のスタイルに否定的な感想を持つ子どもも見られ,そのような子どもの質問紙の記述には,知識注入型の授業を歓迎する内容や,高校入試や定期テストなどで点数をとることが学ぶ目的になっているような内容が見られた。 「はじめに」でも述べたとおり,これから子どもたちが生き抜く時代は,変化の激しい,先の見えない時代である。そのような環境では,主体的に課題を発見し,解決しようとする意欲や態度は不教科の習得すべき事項を身に付けている様子。 ・課題を追究していくうち,他教科の学習内容にもつなげて課題を考えている様子。 ・授業時間外にも,主体的に学習する様子。 ・「一目でわかる」などの言葉を使い,全体像をつかむことに役立ったという記述。 ・複数の学習単元を比較したとき「あるもの,ないものが一目でわかる」などの記述。 ・「いろいろな見方をすることができた」「いろんな角度から見た本があった」などの記述。 ・「分類する意味がわからない」「あんなので覚えられるわけがない」などの否定的な記述。 中学校 図書館教育 3
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