題があるのか,どのように修正すべきかに気付くことができる。講義形式で喋り続ける授業とは対照的に,この授業方法では,教師にもその余裕が生まれる。なぜなら,情報を与えるという部分は学校図書館の資料が担ってくれ,また,学校司書の支援も得られるからであると筆者は考える。 (2)子どもの問いと情報・知識の獲得前項でも述べたとおり,子どもが主体的に学びを深めるためには,学習テーマの質が非常に重要である。更に,子どもたちの学習の様子を観察している中で,情報の獲得の仕方にも,子どもの立てる問いと学習テーマが大きく影響していると考えた。 研究実践の当初は,子どもたちが学習テーマに対して,情報を単体で集めてくる様子が見られた。図4-5は,そのイメージを図示したものである。 情報をこのように獲得する場合,様々な情報 を関連づけて課題解決を図ろうとすると,次の段階で情報をつなぎ合わせる作業を必要とする。 しかし,学習課題に対して子ども自身で問いを立てると,次第に,自身の問いに対して必要な情報や関連する情報を,問いに情報を寄せ集めるようにして獲得していくようになった。図4-6は,そのイメー ジを図示したものである。今回の研究実践では,「問いを立てる」→「情報を得る」→「考える」→「更に問いを立てる」…という 繰り返しで,子どもが学びを広げたり深めたりできるよう企図した。すると,問いの質が高まると,それに合わせて得る情報の質も変化していった。更に,気付きや考えを加えて問いを更に前に進めることで,必要な情報がどんどん集まってくるように見えた。 また,ある一定の結論に達したとしても,それまでの学習で視野の広がりや学習の深まりがある子どもたちは,考えるべき問いや,関心の対象が広がっているため,結論に達しても,更に複数の新たな問いを立てる。また,人との対話も同様の効果をもたらす。したがって,その問いに対して,更に情報を得て検討することで,子どもたちの学びがより一層広がりや深まりをもち,より良い課題解決につながるように見えた。 中学校 図書館教育 29 つまり子どもたちは,学習テーマを追究し,自ら問いを立てて解決する中で,同時に情報や知識を身に付けていくことができると考えられる。またそれは,情報や知識を羅列して頭に入れていく方法とは異なり,実際に課題解決のために情報や知識を使いながら身に付けていくことになる。このような学び方こそが,社会に出た後にも活用できる情報や知識の獲得の仕方であり,学び方ではないかと筆者は考える。 (3)教師の学びここまで述べてきたとおり,学校図書館を活用することで,子どもたちは自ら疑問や課題をもち,様々な対象との対話から気付きを得,主体的に課題解決に向かう力を付けることができると考えられる。しかしこのような力を付けるためには,教師が学校図書館を,何のために,どのように活用するかを考えておかなければならない。それは一方で,教師にとっても大きな学びの機会である。 教師が考えるべきことはまず,子どもに提示する学習テーマについてである。本章第1項でも述べたとおり,学校図書館で子どもたちが主体的に学ぶためには,学習テーマの質が重要である。もちろんこれは,学校図書館に限らず,子どもの主体的な学びを取り入れた授業に共通して言えることである。しかし,通常の授業では,子どもたちが課題解決に使う情報や資料を,教科書や教師が準備した資料などにすることで,ある程度の方向性や到達点を定めることができる。しかし,学校図書館で子ども自身が問いを立て,課題解決型の学習を進める場合には,子どもが何に興味をもち,どのような情報を使って課題を解決するか,予想することが難しくなる。したがって,教師は学習テーマを考えるとき,子どもに何を思考させたいのか,どのような知識や情報を活用してほしいのかを考え,子どもが自然にそのような知識や情報を使って課題を解決していくよう,学習テーマを設定しなければならない。これは,どのような答えを出すかではなく,どのように答えを出すかという課題設定の仕方である。これはまさに,激しい変化の時代を生きる子どもたちに必要な課題解決力をいかに育むかについて,教師が考え,学ぶ機会であると筆者は考える。 次に,子どもの学びの見取りについてである。本研究では,個々の子どもが,自らの問いをもとに学習を展開した。しかし同時に,教科のねらいである力を,子どもたちに付けることも必要である。そのため教師には,子どもたちの学びを的確に見取る力が必要となる。これももちろん,学校図4-6 子どもが情報を得るイメージ (問いを立てる)
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