“子どもが動く”授業ができた。 子どもの変化について 多面的多角的に見られる子どもが増えた。 (例)歴史の時間に地図を見て位置関係や他国とのつながりを考え始める,ニュースを見て自分たちの学習内容と照らし合わせるなど 授業中,疑問をもって質問する子どもが増え,授業が深始めから,どう説明するかを課題としてもち,調べることが習慣になった。それが他教科にも活かされている。これらのことから,子どもが自ら疑問をもったり,多面的・多角的な見方や考え方をしたりするようになったこと,それによって学習が深まり,他教科にも活かされる力がついていることがわかる。また,子どもだけでなく教師も,この授業を通して,子どもの学習を見取り,様々な喜びを感じていることがわかる。 一方で,課題も残った。研究協力員からは「今回の学習方法では,教師による講義の部分が少なく,定期考査等に向けての学習で不安に思う子どもがいた」との声が聞かれた。また,研究協力員の一人からは「知識・理解についての定着が十分でない」との感想が聞かれた。 図2-2(p.9)に示した通り,本研究実践では,単元の学習事項を,子どもが自ら立てる問いをもとに獲得していくことに時間を割いた。そのため,最初に学習内容全体を俯瞰したり,互いが学習したことを共有したりすることによって,学習内容の全体像を理解させるよう工夫した。しかし,どうしても子ども自身では獲得できない範囲が残ることがある。そのため,教師が子どもの学びをつなぎ合わせたり,視点を加えたりしながら,子どもたちに学習内容全体を理解させていくようなまとめが必要であると考える。 教師がこのようなまとめをするためには,子ども一人一人が獲得した学び,グループでの学びについて見取り,それらをどのように共有し,足りない点を加えていくかを考える必要がある。つまり教師は,授業の中で,様々な手段を使って子どもの学びを見取り,それを授業に活かす力を磨いていく必要がある。 第3節 主体的な学びの充実に向けて (1)学習テーマの重要性第3章で述べた主体的な学習の様子から,子どもが学校図書館で,問いを立てて学びを進めるためには,学習テーマの質が非常に重要であると筆者は考える。授業を観察していると,子どもたちは常に,学習テーマを中心にして学びを前へ進めていた。し中学校 図書館教育 28 たがって,学習のスタートから自分との対話の段階まで,教師が子どもに提示したテーマ,またはそれによって子どもが設定した学習課題が,子どもの中で解決の必然性をもって保持されることが重要である。学習の最終段階まで,一つの学習テーマを追究していくことで,子どもはそのテーマを柱として,問いを立て,学習を広げ,深めていくことができるからである。 また,学習の最終段階で,新たな問いを立てさせることが,子どもたちの今後の学習にとって重要である。子どもは更に追究したい問いを残して学習をいったん終える。すると,その問いを保持したまま,次の様々な学習をしていくことになる。このような問いが積み重なっていくことで,他の教科や課題ともつながりが生まれ,自分の立てた問いを,より多面的・多角的に考えることができるようになる。そしてそれは,子どもが生涯学び続ける上で,有効な力になると筆者は考える。 このように,学習の最後まで子どもの中で意味を持って保持される学習テーマを考え出すのは,教師にとって難しい課題である。今回の研究実践の中でも,学習テーマを提示してみたものの,思うように子どもの学習が進まない場面はいくつかあった。例えば,歴史的分野で筆者が計画した【古代文明のすごさを語ろう】という学習テーマの授業では,子どもたちは楽しく調べ学習をし,互いに情報を交流することはできたものの,子どもの振り返り記述には,得られた情報の羅列が多かった。なぜなら,そもそもテーマが「調べたことを説明する」という内容なので,追究する必要がないからである。これでは子どもの思考は深まらない。子どもにとって身近で現実的であり,解決のために教科の学習事項を使う必然性が含まれているような,子どもが思考しながら教科のねらいにせまっていける学習テーマを考え出すことは,教師が力を注いで取り組むべき課題であると筆者は考える。 学校図書館で子どもが学習テーマを追究していく学習では,子どもの学習過程や学習状況がよくわかる。資料の使い方,話し合いの様子からはもちろん,子どもの記述と開いている本を併せて見れば,子どもたちがどのような情報をもとに何を考え,何を融合させて,どこを目指して学んでいるかが教師にも理解しやすい。ワークシートを横から覗き,子どもたちの話し合いの声に耳を傾け,様子を観察すれば,子どもに何を問いかけ,何をアドバイスすれば子どもの学習を支援できるかがわかる。また,子どもたちに提示した課題や指示について,どこに問まるきっかけになっている。
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