容を家庭でも話すなど,授業中にとどまらず,子どもの興味関心を高めているということである。四点目は,そもそも自ら課題や情報を発見することは,子どもにとって頭に残りやすく,達成感や充実感のある学習方法だということである。一方で,インターネットと比較した内容の回答では,正確な情報を得られる学校図書館の資料と,インターネットの利便性の両面が複数の子どもの記述に見られた。自宅でインターネットを使い,調べた情報を持参して授業に臨む子どもたちも複数見られた。また,研究協力員からは,次のような感想が聞かれた。 より現実的,具体的に課題解決しようとするとき,子どもたちにとって,学校図書館の資料とインターネットの情報の両方が同時に活用できる環境が望ましい。既に学校図書館でインターネットによる情報検索が可能になっている学校も増えてきているが,本市ではまだ,授業で多数の子どもが活用できるほど十分に整備が進んでいるとは言えない。子どもたちの興味関心や,より深い学習への意欲に応えるためには,学校図書館のより一層の整備が必要であると考える。 第2節 教師の意識の変化(研究協力員への聞き取り調査から) 本節では,二名の研究協力員への聞き取り調査の結果から,本研究の成果と課題について述べる。 この研究実践を通して,二名の研究協力員の意識に共通して変化が見られたのは,授業の見通しや課題の考え方である。ここではA校の例を挙げて述べる。A校の研究協力員への聞き取り調査では,本研究の授業実践に向けて,その前に学習する各単元で子どもに提示する学習テーマを「内容に関わること」「学校図書館というツールを活用すること」の二つの要素に分け,段階を踏んで計画したとの回答が得られた。そのおおまかな内容を右上表4-1に示す。 表4−1のように授業を計画するにあたり,研究協力員は,アジア州の授業で子どもたちに必要と なる力を細分化し,その力をどの単元で,どのように子どもたちに習得させるかを意識していた。また,テーマの設定についても,子どもたちが一つの答えに集中しないように幅を広げた課題を考えていた。従来は,これらを意識して授業を計画することはあまりなく,実施してみると,非常に手ごたえがあったため,その後の授業にも活かしているとの声が聞かれた。 図1-1(p.2)に示した学習指導要領改訂の方向性でもいわれているように,教師は,子どもたちが「何ができるようになるか」を明確にした上で,その方法として「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を同時に考えていかなければならない。今回,研究協力員が見通しをもって授業を計画したことで,子どもたちは学習内容と学習方法の両方について学びを得ることができた。これは,先に述べた子どもの様子や振り返りなどからも明らかである。学校図書館を活用した学習では「どのように学ぶか」について,様々な工夫ができる。本研究で意図的に行った「人との対話」について,研究協力員からは「資料がすぐ手に取れる環境だからこそ,子どもは教室なら『わからん』で済ませるところを,資料を調べ,説明することができた。質問する子どももそのことがわかっているので,安心して鋭い質問をしていた。」との感想が聞かれた。学校図書館の場としての特性を意図的に活用することで,教室と同じ学習活動であっても,より効果的に子どもの学習を支援することができる。 次に,研究協力員のその他の気付きを挙げる。 学習内容 広大な土地を活かすことを中心とした課題。 自然条件を活かすことを中心とした課題。 地域の特徴的なものをさがす課題。 研究実践(第3章参照) 学校図書館活用 図書分類の視点で教科書を俯瞰する。「分類ワークシート」の活用 学校図書館の資料を様々な分類から幅広く使う。 経済的なことなど,特化した詳細な情報を調べる。 子どもたちが課題について調べれば調べるほど現実に近づく。実際に実現するためにどうしていったらよいかと考えていくと,細かい地域性,政治や経済の話など,レベルの高い話になってくる。そうなると,学校図書館だけでは限界を感じた。そのレベルまで子どもたちが到達できたことは良かったと思う。しかし,本では調べきれないことが出てきて,最後は空想の話で終わらせるしかないこともあり(指導者として)つらかった。ただ,初めからインターネットで検索できたとすると,情報が詳しすぎて子どもたちは混乱するかもしれないとも思う。 表4-1 段階を踏んで計画された授業のおおまかな内容(A校)学習単元① 北アメリカ州② 南アメリカ州③ オセアニア州④アジア州 授業をしてみて 生徒とかかわる時間が長く,個々の学習の様子がはっきり見えた。 社会科が得意でない子が深く考えていたり,一所懸命に取り組んでいたりしたのが意外だったし嬉しかった。 今までは,こちらが求める範囲の答えが出たら満足していたが,図書館では教師の知らないことや意外な観点からの情報を子どもたちがたくさん調べてきて答えを出すので,教師も楽しめた。 中学校 図書館教育 27
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