001総教C030705H28最終稿(中町)
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スラム街になぜ人が増えるのか 砂漠はどのようにして有効活用できるか 同じ地球に生きているのに豊かさがこんなにちがうのはなぜか 台風などの被害を受けないためにしている工夫 米の品種改良の方法 熊本の米の出荷率の高さの理由 四つ目は,ほぼすべての子どもが次への問いをもって学習を終えたことである。「自分との対話カード」に子どもが記述した「次に追究したいこと」「疑問として残っていること」の一例を以下に示す。 学習の経過から見て,子どもたちが最後に立てた問いは,それまでより質が高まっていたり,課題を考える視野が広がっていたり,追究する内容を深めるたりするようなものが多かった。また,そうでない子どもも,学習してきたことに関連して,興味関心の幅が広がったと考えられる問いを立てていた。次への問いも含め,「自分との対話カード」の各項目に対して無記入だった子どもは,ほぼ見られなかった。 五つ目は,子どもたちの記述内容に,自分の学習の成果と課題の両面を意識したものが多かったことである。図3-25(p.20)でも示したように,「良い点」「悪い点」などと視点を変えて学習した内容を分析している子どもや「提案した内容には満足しているが実現するためにはここが足りない」と記述している子どもなど,様々な視点から学習内容を振り返った記述が見られた。また,学び方,資料の使い方,質問や意見の取り入れ方など,学習内容以外の面についても成果と課題の両面から振り返った記述が目立った。 六つ目は,前項でも述べたとおり,子どもたちが,個々に調べた情報を組み合わせて課題を解決していたことである。これは,教師による指示というよりも,子どもたちが課題を解決するために常に話し合っていたこと,向かい合ってお互いの持っている資料が見える状態で学習を進めていたことなどから,グループ内でうまく情報共有がされていったことによる効果であると考えられる。 そして七つ目は,この学習の振り返りとして,「楽しかった」という記述や,記述内容から,とても充実した学習ができていたことがうかがえるものがほとんどを占めていたことである。 図3-28から右上図3-30は,自宅で自主的に調 べてきた情報や,自宅から持参した資料を授業に活かしている様子である。このような子どもが,はっきりと把握できているだけでも 各クラスに数名いた。また,「ワークシートを持って帰って家で続きを調べたい」と発言する子どもや,学校図書館の資料を借りて授業外に学習してくる子どもも見られた。更に研究協力員からは「何人もの保護者の方から『社会科の先生でしょう?とてもおもしろい授業だと子どもから聞いています』と声をかけられてびっくりしました」という声も聞かれた。 これらのことから,子どもが学習に主体的・意欲的に取り組んでいたこと,またそれを家庭でも話題にしていたことなど,子どもの興味関心が高まっていたことがわかる。 第4節 学習が得意でない子どもたちの様子 (1)授業と記述の様子 前節までは,学校図書館での子どもの主体的な学習の様子について述べてきた。本節では特に,社会科の学習が得意でない子どもたちについて述べる。 A校,B校ともに,研究協力員から「社会科が苦手な子どもも積極的に取り組んでいる」「今までノートをとったことがない子どもがワークシートにどんどん書いている」などの感想が,授業の合間に聞かれた。また,A校の研究協力員からは「社会科が苦手な子どもの定期考査の得点が上昇している」という感想が聞かれた。研究協力員が「社会科が苦手」と感じている子どもの定期考査の得点率を見ると,ほとんどが5割に満たなかった。そこで,A校で7,9,11月に行われた社会科の定期考査において,合計得点率がいずれも5割未満だった子どもを「学習が得意でない子ども」として,ワークシートの記述を見直した。なお,定期考査は本研究の意図を直接反映したものではなく,研究協力員により,従来通りの出題傾向で作問されたものであった。 まず,学習内容についての振り返り記述を見ると,他の子どもたちの記述は学習内容に直接関わるものが多かったのに比べ,学習が得意でない子どもは「うまく発表ができた」「もっと調べて発表したい」など,発表等の活動について感想を書いているものが多かった。しかし,図3-31から次頁図3-33のような記述も見られた。 図3-31 「評価シート」記述例 中学校 図書館教育 22

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