001総教C030705H28最終稿(中町)
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最初は全く進まなかった。家で調べてくると,みんなの課題が見えてきた。それでここまでこれた。 もっと地理を知りたいと思いました。今回いろんな班で発表してみて,「こういうのあるんだ」「実行するといい」と思うことがたくさんあって,とても楽しめました。これらの記述から,自宅でも主体的に学習し,それによって授業での理解に手応えを感じていた子どもや,みんなの提案を現実に実行することを考え,学習を楽しんでいた子どもがいたことがわかる。 図3-27は,ある子どもの「自分との対話カード」への記述である。 自分が担当している国と,他の班の担当地域の特産物を比べて,どこの国と貿易したらよいか考えられるから,他の班の発表はとても参考になる。 これらの記述から,子どもたちは,様々な角度から情報を検討したり,関連付けたりしながら考えることで,より広く学んだり,さらに追究したりすることができると感じていることがわかる。 次に示すのは,この学習で子どもの関心意欲が高まったことがうかがえる記述を抜粋したものである。 (3)自ら問いを立て学ぶ学習から見える成果 第1項および第2項で挙げた子どもの記述はほんの一例であり,多くの子どもが様々な学びをうかがわせる記述をしていた。子どもの記述には,次のような特徴が見られた。 一つ目は,学習テーマを実社会の問題として,本気になって追究している様子が伝わってくることである。そこには「教科書の内容がわかれば良い」とか「テストで点数をとるために」といった考えは見えない。授業中の活動の様子からも,教師に指示された課題だから取り組むという様子はほぼ見られず,夢中になって話し合ったり情報を集めたりしていた。しかし少数ではあるが,課題追中学校 図書館教育 21 究に,初めは積極的に動けなかった子どもたちも見られた。これらの子どもの特徴として,研究協力員から聞かれたのは,「(いわゆる)成績の良い子が意外に動けない」という言葉であった。また,早々にワークシートを埋め,手持無沙汰な様子の子どもに「もっと検討してみたら?」と声をかけると「これ以上何をすればよいのかわからない」と困惑してしまうこともあった。このような子どもたちは,自分で疑問や課題を見出し,自由に考え発想してテーマを追究する学習に,どう取り組んでよいかわからなかったのではないかと筆者は考える。しかし,これらの様子は何度か学校図書館での学習を行っていくうちに見られなくなり,むしろ,このような子どもたちが率先して,積極的に学習テーマを追究する姿が見られた。 二つ目は,子どもたちが人からの意見をとても 肯定的に,また前向きにとらえ,自分の学習に活かしていることである。自分との対話カードにも,「人から意見・質問をもらうことによって新しい考え方やもっと調べないといけないことが見つかった」「人の意見を加えて自分の考えを広げたり,それを繰り返して班がいい考えをもてた」「考えを深めるためには他人の意見を取り入れることがよくわかった」「もっと詳しく調べたくなり,興味をもてた」などの内容が,ほとんどの子どもの記述に見られた。また「人が考えていることと自分の考えていることを合わせると,意外な考え方や考えの理由が明確になったりして,考えに深さが出ておもしろい考え方ができると感じた」など,人と自分の考えをつなぎ合わせて考えを深めたという記述が見られた。反対に,「自分が質問することで違う課題についても考えられた」という記述や,「人の意見を取り入れることは,自分が分からないことを解決してくれた」などの記述も見られた。また,「ぜんぜん違う観点からの質問がくるので,いろいろな考え方をしてみようと思った」など,ものの見方や考え方全般に関する記述も見られた。 三つ目は,協働して学習することについて,子どもたちがさまざまな気付きを得ていることである。自分との対話カードには「このようなやりとりをすることによって,お互いに新しく課題ができたり,資料を読み取る力がついたりと,今後の社会にも通用するような役立ちがあるとわかりました」や「新たな課題が生まれ,その課題を解いて,また新たな課題が生まれるため,高め合える」など,グループで学習することで,子どもが相互に学習のレベルを高めていけたと実感している記述が見られた。 て色々な考えが出てくるから,それをこれからもしていく。 図3-27 「自分との対話カード」記述例 研究協力員によると,この子どもはふだん,学習にあまり意欲的ではなく,授業中にノートをとることも少ない子どもとのことである。その子どもの「もっともっと深く調べたいと初めて思った」という記述に,筆者は教師として,このような子どもの気持ちを大切にしたいと改めて考えさせられた。

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