図3-8 「本との対話カード」(子どもE) 図3-10 「本との対話カード」(子どもG) 図3-9図3-8から図3-10は,アジア州の学習で,東アジアを担当したグループの3人の子ども(以下「子どもE・F・G」という)の「本との対話カード」からの抜粋である。 子どもEは「モンゴルでとれるものは何か」という 問いを立て,鉱産資源が採れるという情報を得た。中でも鉄鉱石を活かせないかと考え,学校司書に「鉄の加工についてわかる本はないか」と相談し,工業国であるドイツの本を読み始めた。調べた結果,鉄は機械類に多く使われることがわかった。そこで,医療用機械なら,どこの国でも需要があると考え,それを生産し,輸出することを考えた。 子どもFは「日本はどのように世界と結びついているのか」と いう問いを立て,調べるうちに眼鏡産業に注目し,高い技術力を海外のブランドに提供していることや,作った眼鏡フレームを輸出していることなどを,今回の学習テーマに活かせないかと考えた。 子どもGは「東アジアの食べ物について」という問いを立て,伝統的な食文化から伝統的な器へと学習が広がり,東アジア地域と世界とのつながりについて問いを立てた。そして学習を進めるうち,韓国のコンテナ物流についての情報を得た。 結果,このグループは,「モンゴルの鉱産資源と日本の技術力を活かし,医療用機械を作る」「作った機械を韓国のコンテナ物流を使って輸出する」「その結果,医療機械で癌や感染症にかかっている人を助けることができ,どこの国の人もほしい会社になる」という起業提案をした。 このグループの子どもたちは,個々に問いを立て学習した,複数の国の「資源」「技術」「物流」についての特色を関連付けて,提案内容を考え出したといえる。つまり,子どもたちは,それぞれの得た知識や理解を関連付け,活用して,学習を広げ,深めて一定の結論を出したと考えられる。 また「対話カード」を見ると,個々の子どもの立てた問い,得た情報と,それらを使って,グループではどのように課題解決に向かったのかが,おおよそ推測できる。学校図書館での協働的な学びでは,グループとしての成果は見えるが,個々の子どもがどのように学んだのか,グループではど中学校 図書館教育 17 のような経過をたどって結論に達したのかが見えにくいことがある。しかし,このように「対話カード」を活用し,子どもが自分の学びを記録していくことで,子ども同士で学びを共有することや,自身の学びを振り返り評価することが可能であると同時に,教師も,子どもの思考や学習の過程をおおよそ把握することができ,助言や評価を返すことができると考える。 (4)学習の様子から見た学びの広がり・深まり本項では,子どもたちの学習の様子観察により見られた学習の広がりや深まりについて述べる。 子どもたちが学校図書館で,主体的に課題を追究していく様子を観察していると,学習が進むとき,次のような手順を踏んでいる姿が見られた。 図3-11は,p.11に示した授業の流れのうち,「本との対話第1段階」で,「本との対話カード」を使って自分の疑問を追究している様子である。 これは,疑問をもとに本との対話を通して情報を得,個々の学習を深めるとともに,次のグループ活動に備えて準備をしている段階である。この段階での情報収集や学習の進め方には個人差があり,最初から単元のゴールとなる課 題を頭に置いて情報を探している子どももいれば,ただ興味のあるものについて情報を集めている子どももいた。また,多くの資料を読み比べて広く情報を集めようとする子どももいれば,一冊の本をじっくりと読み深める子どももいた。この段階での子どもたちの会話は,「こんなの載ってる」や「いいこと思いついた」など,自分が見つけたものや思いついたことを言い合うようなものが多かった。 図3-12は「人との対話第1段階」で,自分の学習した内容について伝えて質問や意見をもらうために,人との対話をしている場面である。 ここでは,子どもたちは「人との対話カード」をもとに,個々に学習してきた内容を交流し,そ れに対して質問や意見を投げかけた。このとき,子どもたちの中でゴールとなる学習テーマが意識されているかどうかによって,質問の方向性に特徴が見られた。 学習テーマを念頭に置いている子どもは,「アジアでの起業にどのように活かせるのか」や「地域活性化のため幅広い年代の人に興味をもってもらえ
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