表2-2 活動の「動詞」から見る学習への深いアプローチと浅いアプローチの特徴(13) ※一部筆者改変図2-2 本研究での単元計画従来の単元計画本研究での単元計画問い問い問い問い問い問い分類ワークシート対話カード次への問いつなぐ加える俯瞰本との対話人との対話自分との対話俯瞰要がある。そのためには,A〜Iの要素が必然的に含まれるような学習テーマを,子どもたちに提示する必要がある。 図2-1に示した学習の流れの中にも,A〜Iの要素を取り入れる必要がある。どの段階でどの要素を取り入れることが効果的か,検討し,計画する必要がある。このように様々なアプローチを組み込みながら学習を深めることを通して,子どもは学習内容を理解していくと考えられる。この理解は,項目の記憶や浅い理解にとどまらない。したがって「これが理解できればOK」という性質のものではなく,理解すれば更に疑問が生まれ,その疑問を解消すれば更にまた疑問が生まれるという終わりのないものになると考えられる。つまり,この学習には完了するということはなく,中断または別の課題への発展,移行が区切りとなると考える。 そこで,この学習を含めた単元の計画をどのように計画するかを考えた。図2-2は,筆者が従来,日常的に行っていた単元計画と,本研究での単元計画を比較したものである。 単元の学習事項学習事項学校図書館活用まず,子どもたちは,図1-1(p.2)に示した「分類ワークシート」を活用し,教科書の基本的な学習事項を俯瞰する。また,最低限必要な基本事項を,教師が指導する。その上で,学校図書館を活用し学習活動 A振り返る B離れた問題に適用する C仮説を立てる D原理と関連づける E身近な問題に適用する F説明する G論じる H関連づける I中心となる考えを理解する J記述する K言い換える L文章を理解する M認める・名前をあげる N記憶する 深い アプローチ 浅い アプローチ 授業時数全体共有(発表)中学校 図書館教育 9 た探求型の学習テーマに取り組む。学校図書館では,子どもが自ら立てる問いを連続させ,最初に俯瞰した基本的な知識と,学校図書館で得た情報を使い,思考を伴う学習テーマに取り組む。学習を広げ,深めるために,様々な対話の要素を取り入れる。最後に,各々が学習したことを全体に共有し,一人一人の学びを更に広げる。加えて,子ども自身で獲得した知識や理解を,教師が教科の見方・考え方をもとに整理し,教科のねらいに合った理解に導く。 このような学習を行うことで,子どもたちは,教師から教えられる知識や理解の習得にとどまらず,幅広い知識や理解を,子ども自身の力で獲得することができる。この学習では,知識は単なる学習事項の記憶ではなく,実際に活用しながら得られる生きた知識となり,具体的な理解やイメージを伴って,子どもの中に定着すると考えた。この他にも,先に課題解決型の学習テーマに取り組み,子どもの中に概念や予備知識が生まれた上で,細かな学習内容と結び付けていくことも可能であると考えた。 このような考え方で,単元の指導内容と方法を計画することで,実際の社会生活を営む上で必要な内容を学習テーマとして設定し,教科の学習事項と関連付けて学ぶ時間的余裕が生まれる。また,教室での講義以外に,学校図書館をはじめとする様々な学習環境を活かしながら学ぶことが可能となる。 第2節 思考を可視化するツールと授業の組立 (1)対話カード 1年次の研究では,図1-3(p.4)で挙げたレポートの例のように,子どもに学習の契機となる問いが生まれているにも関わらず,子どもも教師も,それを十分に意識して学習を進めていくことができなかった。子ども自身が主体的に学習を広げたり深めたりするためには,自らの学びの過程を客観視できる仕組みが必要である。また,教師が子どもの主体的な学びを支援,評価するためには子どもがどのように学びを進めているかを見取る必要がある。そこで,子どもが何を考え,どのように学びを進めたかを可視化するため,次頁図2-3から図2-5に示す3種類の「対話カード」を考案した。 次頁左上図2-3は「本(情報)との対話カード」(以下「本との対話カード」という)である。このカードを活用する主なねらいは,次の3点である。
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