図2-1 本研究で取り組む学習の流れ ・自発的な疑問をもとに,自ら問いを立てる。 ・問いを解決するための学習方法を考える。 ・一つの問いが解決したら,次の学習につながる問いを立てる。 ・子ども自身で学習過程を振り返るために,思考を可視化する。 ・学校図書館で得られる情報,他者など,外界(自分以外の対象)との対話を意識的に取り入れる。 ・課題を発見するために使う ・情報を得るために使う ・気付きを得るために使う ・考えを整理したり根拠を得たりするために使う ・自分の中にある問題意識をはっきりさせるために使う・振り返りのために使う 中学校 図書館教育 8 が能動的に学び続けるためには,自らの学びを客観的にとらえ,改良を加えたり,更に理解を深めるために何を考えていくべきかを認識したりする必要がある。そのため,子どもが自らの学びの過程を認知できる学習システムを授業の中に取り入れなければならないと考えた。また,深く考えるために,既習の知識に加えて新たな知識を関連付けて獲得していくことも可能であると考えた。 子どもが自ら立てる問いをもとに,深いアプローチを学習方法の要素として取り入れ,学校図書館を活用した学習サイクルを構築することにした。 (2)研究の概要本研究では,自ら問いを立て学び続ける力を付けるため,子どもが自ら立てる問いを中核にして,他者と交流したり,自らの思考を客観視して分析したりする学習活動を,学校図書館を活用して行う。この学習を通して,子どもが教科等の内容と同時に学習方法を学び,自ら問いを立て学び続ける力を育成する。 子どもの問いを連続させ,学びを広げたり深めたりするためには,学習のサイクルを繰り返すことが必要である。白水・三宅・益川(2014)は,学びのゴールはそこに近づいたら次のゴールが探せる「『発展的達成型』のゴール」(12)と考えるべきだと述べている。反対に「目標達成型」のゴール設定では,学びの主体性が損なわれ,学び方を学ぶのが難しいとも述べている。したがって,一連の学習の流れの中に,子ども自身で何度もゴールを再設定するような過程を組み込もうと考えた。 図2-1は本研究で取り組む学習の流れを図示したものである。 子どもは「自らの疑問→情報収集→考える→新たな疑問」という学習の流れを繰り返す。子ども自身が解決すべき疑問をもつことが,ゴールの設定である。このように子ども自身が解決すべき疑問をもち,自ら学習のゴールを設定することを筆者は「自ら問いを立てる」と表現する。 この学習の流れでは,子どもが自らの力で学びを進められるように,学習過程で次の要素を取り入れた。 学校図書館を教科等の学習で活用する意義については,第1章で述べた。学校図書館には,問題を見いだして解決するまでのプロセスを支える豊富で多様な情報がある。また,図書分類をはじめとし,情報を分野ごとに整理する仕組みを活用すれば,物事を多面的・多角的にとらえ,考えることができる。更に,資料や情報を記録し,それに自分の考えを紐づけていくことで,思考の変遷を可視化することができる。加えて,学校図書館では,そこにある書籍,資料,それらの配置等から,学校図書館との対話を通して気付きがうながされたり,考えのヒントが生まれたりする。これらを意図的,無意図的に活用することによって,子どもが自らの力で問いを連続させ,学び続ける力を付けることができると考えた。 図2-1に示した学習の流れの中では,学校図書館を,次のような目的のために活用する。 次頁表2-2は,活動の「動詞」から見る学習への深いアプローチと浅いアプローチの特徴を示したものである。 筆者の経験上,いわゆる「調べ学習」で学校図書館を活用した際,子どもたちは主に資料を読み,その内容を引用したり言い換えたりしながら,レポート等に記述していく。これは,J,K,Lの学習活動にあたると考えられる。子どもたちに深い学びをうながすためには,A〜Iの要素を取り入れる必
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