図1-4 道徳の教科化に対する賛成,反対の意識 して-結果報告書」は全国から抽出された教師を対象にしているという違いはある。しかしながら, 74.8%の教師が「道徳の授業が十分に行われていないと思う」と感じていることは驚くべき現状であり,早急に改善すべき状況であると考えられる。 このような状況を踏まえて,教育再生実行会議の報告を見ると,「しかしながら,現在行われている道徳教育は,指導内容や指導方法に関し,学校や教師によって充実度に差があり,所期の目的が十分に果たされていない状況にある」(4)と指摘されている。やはり,まだまだ道徳の時間の取組には不十分な点があると感じられる。 また,道徳の教科化に対して現場が一丸になっていないという,苦しい現状もある。中央教育研究所の教科書研究会が平成26年10月に小中学校の1020名の教師を対象に行った「教師の意識調査」(5)の結果から,「道徳の教科化」に関する受け止めを示したグラフを以下,図1-4に示す。 n=1020 ここでは道徳の教科化について,14.6%の賛成に対して,反対と考える教師が約3倍の43.6%という圧倒的な差で多いという結果になっている。この結果を受け止め,今回の教科化に向けて,道徳の意義をきちんと教師が実感し,周知する取組が必要であることがわかる。 (2)道徳の時間での課題 ではなぜこのような状況が生まれてしまうのだろうか。従前,道徳の時間は教科ではないため,教科書までは存在しなかった。よって,教えるべき内容項目が学習指導要領によって提示されているものの,その価値をどのように,どの教材を使って教えるのか,そしてその効果についての検証は,各校独自の判断に委ねられていたわけである。 このような場合,道徳の授業が活性化されているかは,運用の担当者である道徳係の力によって大きく左右されることとなる。また,一定期間は活性化していた場合でも,力のある道徳係の教師が異動になった後,牽引役を失った多くの学校で,道徳教育に対する取組が衰退することとなる。 このように特定の教師の資質・能力に依存する形では,真の意味で学校に道徳の授業の活性化をもたらすことはできない。しかもこれからは道徳の教科化に際して,全ての教師が道徳の授業の当事者としての意識をもち,授業力を向上させなければならないのである。 しかしながら,多くの中学校では「校務多忙」のもと,教材選定が道徳係に一任されたり,道徳教材の確保自体がままならず,教材の分析・研究もなかなか進めることが困難な現状があったりしたのではないだろうか。しかも今までは,道徳の時間の評価を成績表に明記することは直結しなかったことから,日常業務の中でその優先順位が後退し,その結果,教材研究の不足による効果的な指導方法がわからないなど,授業の展開に根本的な支障をきたすような困りを抱えることになってはいなかっただろうか。そしてその困りがまた,授業での学びの成果を把握する障壁となり,多くの教師の道徳の時間への消極的な「困り」につながっているといえないだろうか。 そのような想定される「困り」による停滞の構造を図式化したのが,図1-5に示す「道徳を取り巻く「困り」の停滞の構造」である。 いままでよく取り上げられた困りは,道徳の時間の実践中の「教材・指導法の研究」にみられる「教材研究の時間がとれない」であるが,他にも図1-5 道徳を取り巻く「困り」の停滞の構造 中学校 道徳教育 3
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