図1-1 道徳の時間における授業実施時数平均の推移(1) 平成20年度の調査で実施された道徳の年間の授業時数の平均が基準の「35.0時間」であったことから考えると,平成24年度は微増ながらも向上したといえる。更に遡って平成14年度調査,平成10年度調査に至っては,まだ標準授業時数を達成できておらず,この14年間で道徳の時間の実施に対する意識は確実に向上したように見える。 その全国調査で分かった,中学一般校での道徳の時間の設定時数についての調査結果を二つ目の資料として図1-2に示す。 全国の中学一般校では回答した教師のうち,80%もの高い割合で週一時間相当の「現在程度」を支持していることがわかる。次いで「減らす方が良い」が8%と続いているが,その差は圧倒的であり,教育現場では道徳の時間は週一時間程度の頻度で行う,現状の方針が支持されているように感じられる。 しかし,この資料の結果から,道徳の授業が全ての学校できちんと必要数が実施されているかというとそうとはいい切れない。 三つ目の資料として,実施状況への受け止めへの回答を示す。実は,図1-2と同じ調査報告書の別項目で「道徳の時間が必ずしも十分に行われていないと言われていることがあります。広く中学校の教育全体を見たとき,あなたはどう思いますか」という項目があった。その結果を円グラフにしたものを以下の図1-3に示す。 ここでは,回答した全体の4分の3に当たる74.8%の教師が「道徳の授業が十分に行われていないと思う」と回答している。図1-1の「道徳教育推進状況調査結果」は学校自体を対象にしており,対して「道徳教育に関する小・中学校の教師を対象とした調査-道徳の時間への取組を中心と第1節 道徳の時間が抱える問題 (1)道徳の時間を取り巻く状況 道徳の時間を行う現場にはどのような課題が存在するのだろうか。それを探るために四つのアンケート資料を提示する。 まず一つは文部科学省実施の「道徳教育推進状況調査結果」である。この報告は全国の国公私立の小中学校全てに対して実施したアンケート調査結果である。そして中学校の「道徳の時間の授業時数(平均)」という項目で,平成24年度調査の実施平均を確認してみると,現在の学習指導要領が示す標準授業時数の35時間を上回る「35.1時間」であった。これらの推移をグラフで示したものを,以下の図1-1に示す。 また,平成24年2月に調査した東京学芸大学の「道徳教育に関する小・中学校の教師を対象とした調査-道徳の時間への取組を中心として-結果報告書」でも,道徳の時間における年間設定時数の意識についての調査結果が出ている。この調査は文部科学省の道徳教育の研究指定中学校237校と,そうでない一般の中学校からの抽出500校の教師(上限6名)を対象に調査票が配布され,1594枚が回収された。そのうち,道徳教育の研究指定を受けていない一般の学校の教師は1262名となっている。 第1章 道徳の時間の評価 図1-2 道徳の年間設定時数について 中学一般校(2) 図1-3 道徳の時間の実施状況への受け止め(3) 中学校 道徳教育 2 n=1262
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