この表を見ると,全ての授業が学年平均値で「4」 。 人がいないのが現状である。そこで,分析などのデータを利用して,指導案の作り方や違う方向からの入り方を検討することができたり,他の教師からアドバイスをもらえるようになったりしたことも自己評価の尺度化の利点に感じられた。 次に,これらの自己評価の蓄積を次年度の年間計画に活用する例を示す。道徳の年間の授業時間の設定は35時間であり,ここまで,B中学校は順調に設定時間を消化している。25ページの表4-1と同じく,自己評価の集計表に入力することで集計表は自動的に作成される。B中学校では4月当初から尺度化に取り組んでおり,その集計表からいくつかの教材の抜粋が,以下の表4-2である。 表4-2 B中学校で実施した道徳の評価平均値 を越しており,高い水準の振り返り,授業が行えていることがわかる。しかしながら,この結果に安穏とするのではなく,道徳に対する取組が色あせないためには,常に新しい視点や試みを導入し,更新するシステムを心掛けるべきである。よって比較的評価が低かった「土曜日の朝に」「傘の下」「国境なき医師団」「白紙の答案用紙」の4教材に関しては,授業展開の再考,教材資料自体の差し替え,実施時期の変更,補助教材の追加などを検討し,必ず何らかの対策を講ずることとする。 これはどのような優れたシステムでも100%完成した時点で衰退がはじまるので,常に何分の一かを更新対象とする方式である。こうすることで常に新しい視点が更新されることになり,道徳教育が生き続けることとなることを想定している。 第3節 今後の自己評価導入に向けての課題 (1) 評価や運用システムの必要性 道徳の評価や運用のシステムを確立させることが,なぜいま必要なのかを,前述した中央教育研究所が行った「教師の意識調査」に関するアンケート結果から論ずる。実はこのアンケートの「道徳の教科化」に対しての役職別の傾向を見ると,「賛成」の割合が最も高いのは校長で,最も低いのは教務職であった。以下の図4-5に役職別の賛否の比率を示す。 ここで教科化に最も反対の立場をとるのが,学校の運用を担う教務であることは,道徳教育の推進に携わる者は非常な危機感をもって当たらなければならない。なぜなら,教科化推進・道徳の授業の確保に教務の協力が必須であるからだ。 教務職で道徳の教科化に消極的な意見が多いのは,道徳の評価をどう取扱えばいいのか,授業時数をどう確保するのかなど,教科化に伴う煩雑さ,業務の増加に対する負担感が影響しているのではと考えられる。そうであれば,円滑な導入のためには,評価・運用についての整理と評価や運用の対応策の提示が急務であることがわかる。 (2) 「生徒による自己評価」の課題と目標 今回の研究で行った,生徒による道徳の授業の自己評価とその分析表の作成は,その導入によって,道徳における二つの評価のうちの「指導の評価」について,持ち回り道徳への効果の追加,授業設計の見直しに指針となること,教師に道徳の指導の効果を実感させる手助けになったことなど,大きな成果を見取ることができた。 また,それらのデータを次年度に継続して活用して常に刷新を目指すシステムの提案など,さらなる可能性を示せたと思われる。 図4-5道徳の教科化への賛否 役職別(32) 中学校 道徳教育 29
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