って学べた。特に思いやりを扱った「阪神淡路大震災」 の授業では,当たり前と感じていたことを見つめ直し, 忘れてはいけないと考えた。また,他の授業の中でも この集計表は13ページの図2-5で示した自己評価のファイルに入力することで,自動的に作成されるものである。毎週の記録を行っていれば,年度末にはその年に行った全ての道徳の授業の自己評価が一枚のシートに集約され,次年度に向けての参考資料となるように設計されている。 (31)NHK「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ「国境なき医師団:貫戸朋子」KTC中央出版 2011.4.5 とから,道徳の授業で積極的に思考を深めようと取り組む姿が見えてくる。 その中でも生徒②が最高評価をつけたのは2-(2)温かい人間愛を取り上げた「阪神淡路大震災」の教材であった。以下に図3-9として示す。 言による評価例を以下の枠内に示す。 第1節 A中学校での実践研究で見えたこと (1) 「生徒による自己評価」の検証 A中学校で研究対象となった学年は,中学1年生であり,まだ生徒自身が自分の中の道徳性を磨くという意識より,道徳的価値に触れるだけで新鮮に感じ, 感動・共感を覚える意識の段階である。いわゆる,まだ道徳的価値を発見・注入の過程であると感じる。この段階では生徒が授業に積極的中学校 道徳教育 25 第4章 実践研究の成果と今後の展望 図3-9 生徒②の振り返り例「阪神淡路大震災」B中学校 また直近の授業で「自分のこれからの考え方に影響はあったか」の項目で「4」を付けている授業として4-(1)を扱った「白紙の答案用紙」の授業があったので,そのワークシートの記述も取り上げる。以下に図3-10として示す。 図3-10 生徒②の振り返り例「白紙の答案用紙」B中学校 これらの振り返りを参考に,学びをまとめた文毎回の道徳の授業でしっかりと自分のことを振り返 しんどさから逃げず,ちゃんと考える大切さを学んだ。 このように,本研究の生徒による自己評価の記録は,生徒理解の手助けや文言による評価を行う際に,教師側が注目するべき授業・教材の選定や活用に,おおいに益することができると考える。 に関わったり,活発な意見交換を行ったりすることは難しく,教師がねらいとする道徳的諸価値に向けて,先導して意見を引き出そうとする展開となる。教師が提示する道徳教材に対してそれぞれの生徒が意見や感想をもち,教師に指名された生徒が意見を発表するような形態が多い。このような授業の多くは生徒全員が前を向き,教師と向かい合う,いわゆる一斉授業の形態で進められる。 このような授業は基礎となる道徳性を身に付ける際には有効である。しかしながら,発表する生徒は対面する教師の様子しか見えず,多様な見方や価値観との磨き合いが生まれにくい。よって,より高次の道徳的葛藤や多様な価値の理解の段階には,まだ入っていないとも考えられる。 そのため,道徳教材に対しても,感動的ではあるが簡単に理解しやすいビデオ教材への評価が高く,反面,読み物や自分を振り返るという深い思考を求められる教材になると評価が低くなることが,学年の教師からの不満として挙がっていた。 検証のため,以下の表4-1にA中学校で研究協力開始後の道徳の授業の評価点について抜粋してまとめた。 表4-1 A中学校で実施した道徳の評価平均値 A中学校の例を挙げれば,今年度,夏休み以降の道徳の授業での自己評価の平均値を確認すると,ビデオ教材をメインで取り扱った「ブタのPちゃん」の2時間目が5点満点中の4.36であることや,高い値が出た教材である「○○剣士」や「4分間の奇跡」といった教材の授業構成がビデオ教材を扱った授業であった。それに対して,映像を使わず,読み物教材だけで行った「カストーディ
元のページ ../index.html#27