生徒②についてはほぼ自己評価に満点をつけることがない。だが,その振り返りの記述については毎回3行から4行ほど,丁寧な字でしっかりとつづられ,それらのことから,道徳の授業についての本人の受け止めは決して軽くないことがわかる。資料に対する評価はおおむね高く,また,自己評価の面でも「深く考えることができたか」の項目では常に高い自己評価を行っている。そのこ った「象の背中」の授業では,色んなことをしてもら っていることに気付き,親への感謝と「親孝行」につ いて深く考えました。また授業を通して,いつも自己 の考えや行動をきちんと振り返ることができました。 ◆生徒②に対する活用例 この結果から生徒①は毎回の授業に対して,積極的に評価しようと取り組み,様々に試行した上で記入していることがわかる。また,評価を開始した当初は満点が多かったのが,後半は全てに満点を付けなくなっているのは,自らの学びで足りなかったところはどこかの意識が出てきたからだと思われる。その根拠は前半部分の25点満点の時期では,振り返りの記述が一文のみで「正直に言うと,自分は大人になるのが怖いです。」や「今日考えたことをチャレンジ体験で生かそうと思った。」などの単純な思考だったからだ。ただ,4-(6)家族愛の項目の『象の背中』については多くの記述があり,この時間を特に心に響いた道徳的価値として取り上げることが可能である。 毎回の道徳の授業に意欲的に取り組み,家族愛を扱中学校 道徳教育 24 を抽出した。 ◆生徒①に対する活用例 まず,生徒①の尺度評価をまとめて再構成したものを以下に表3-3として示す。 表3-3 生徒①の尺度評価のまとめ(空欄は欠課) 以下,図3-8として示す。 また,低い評価を付けた授業にも「何が原因で図3-8 生徒①の振り返り例「象の背中」B中学校 響かなかったのか」を探ることは重要な意味があり,記述などを精査するべきである。生徒①の場合,3-(3)崇高な生き方の項目の「国境なき医師団」で最低評価が付けられており,その記述に当たると,「生きる喜びにつながる生き方とはどんな生き方だと思いますか」という発問に「なるべく他人に迷惑をかけずに好きに生きる」と答えていた。他の記述からも自己に対する肯定感の不足などが見て取れ,その補完の手立てを教師の課題とするべきと考えられる。 これらのことをまとめて行った文言評価例を以下の枠内に示す。 続いて生徒②の尺度評価をまとめたものを以下に表3-4として示す。 表3-4 生徒②の尺度評価のまとめ(空欄は欠課)
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