どのように発問し,生徒の心を揺さぶればよいかは担任クラスが有利ということになる。しかしながら,そのねらいへの切り口,迫り方については,前回の反省を生かして行われた2週目の授業の方が向上し,より効果を上げているといえるのではないか。また,生徒からの視点に立ってみても,2週目以降の授業の方が,より効果を感じる授業を提供されていることになる。 かつて,道徳の授業は担任クラス以外では教育効果が落ちるので,持ち回り道徳は行うべきでないとする意見もあったが,今回の研究内容と持ち回り道徳は相性が良く,少なくとも懸念される点を補完することによって,そのさらなる効果を実証できたことがわかる。 次節では,数年にわたって道徳の授業を熱心に行い,実績も積み重ねているB中学校での実践を検証したい。 第2節 発展中期のB中学校における実践 (1)現状と教師アンケートの分析 B中学校は1学年5クラスの中規模校で今回の研究実施の対象学年は2年生である。道徳教育の推進は,以前から本市の道徳の研究会でも熱心に活動する教師が行っており,教材の蓄積は潤沢である。ただし,毎週の道徳の教材についてはA中学校と同じく,ほぼ道徳係であるその教師一人から提案され,全ての教師が教材選定へ積極的に関わっているわけではない。 しかしながら,職員室で道徳の授業に関する話題は頻繁に行われ,自ら良質な教材を発掘して提案する教師も出てきた。毎週の道徳の時間も計画的に確保されており,行事などで出来ない場合は,時間の振替などの措置を取り,年間35時間の教材を使った授業の実施が行われている。 懸念されるのは第1節でも記述したように,牽引役の教師が異動になった後,道徳に対しての熱意が継続できるのかという点である。道徳教育が熱心に行われていた多くの学校では,次は牽引役を失った後でも取組が衰退しない対策を講じる必要がある。 毎週系統的に実施されているためか,道徳に関するアンケートにも,教師の意識が高い水準にあることが示されている。A中学校と同じく,「道徳教育に関する小・中学校の教師を対象とした調査」のアンケートと三つの項目について注目したものを右上の図3-3で示したい。 まず注視したのは2ページの図1-3でも取り上げた「道徳の時間の実施状況に対する受け止め」についての項目である。B中学校では「十分である」と回答した教師と「十分ではない」と回答した教師が同数となり,東京学芸大学での調査結果で出た全国的な中学校の数値が25.0%であることと比較しても,B中学校の実施状況に高い満足度が窺えた。このことから,B中学校は道徳の時間に対する受け止めとしては,高い意識で取り組んでいる学校だといえる。 道徳の授業が十分に行われていないとする理由について,B中学校では全国の中学一般校と受け止めは近く,「忙しくて他の指導に授業が取られる」(66.7%)が主な理由となっていた。しかし,全体的にも挙がった意見は少数である。集計したグラフを以下に図3-4として示す。 図3-4 十分に行われていない理由について B中学校 「忙しくて他の指導に授業が取られる」の選択割合が高いのは,道徳の授業を他の教科や特別活動,総合的な学習の時間に読み替えている可能性もあり,改善すべきポイントである。そして前述のとおり,これは学校体制の問題ともいえるのである。その現状を打開するためには,きちんと道図3-3 道徳の時間に対する受け止め(B中学校) 中学校 道徳教育 21
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