た回答をグラフにまとめたものを以下の図3-1で示す。 ここで道徳の授業が十分に行われていないと感じる理由の上位に挙がっているのは,「どう役立っているのかつかみにくい」と「指導の仕方が難しい」の二点であった。また,「忙しくて他の指導に授業が取られる」と「指導が形式化して魅力が少ない」が次点に挙がっており,これらを含めた解決策が求められることがわかる。 調査結果から,A中学校が取り組む課題を整理すると,「良質な教材・資料の確保」と「道徳の授業の効果を実感できる手立て」,「道徳の授業の指導の仕方の習得」がさらなる向上のための課題だと考えられ,それらを改善するための手立てに,「生徒による自己評価」の活用が効果を高める一助になるのではないかと予想を立てた。 図3-2 度合い分析の継続記録の実践例 A中学校 A B 中学校 道徳教育 19 図3-1 十分に行われていない理由について A中学校 (2)「生徒による自己評価」の活用 まず,第2章の第2節(4)で提案した,「生徒による自己評価」の度合い分析を記録し,活用する実践を行った。分析表に記録したものから抜粋したのが,以下の図3-2に示した度合い分析の継続記録分析の実践例である。 ここで一人の生徒を例にとって,生徒の学びへ迫った例を紹介する。図3-2のAで示したように,この生徒は,4-(7)愛校心の「共感・感動」と4-(8)郷土愛の「深く考える」という項目で「2」を付けている。観点4は「主として集団や社会とのかかわりに関すること」なので,そこで豊かな学びができていないと自己評価をしているわけである。また逆に,2-(3)友情の「深く考える」では,最も高い「5」を付けているということは,この項目に強い関心があり,何らかの課題をもって授業に臨んでいるか,何らかの示唆を受け取ったとも考えられる。ここで気になった項目があれば,ワークシートの記述に当たり,その学びがどうだったかの詳細を分析するのである。 ここでの学びについて,生徒が付けた自己評価の尺度が低いから学びが不足しているといった短絡的な判定はしない。生徒本人が目指す到達水準が高い段階を求めている場合もあるからである。あくまで注目するべき点を見極める材料として扱うことを心掛ける。 また次に,クラス単位での道徳の授業に対しての受け止めを示した図3-2のBを見てみたい。発展初期であるA中学校では,今年「持ち回り道徳」に学年を上げて取り組んだ時期があり,ここで抜粋した期間は,その「持ち回り道徳」の時期となっている。A中学校での「持ち回り道徳」の実践に,
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