001総教C030705H27最終稿(中山)
14/32

直し,その新たに発見・内在したものを深化した道徳性について記述する。生徒はその自らの経験や生育歴,価値の序列などによって多様な判断を行い,また今後自分がどのように実践していくかなどを具体的に思考することによって,道徳的実践力を高めていく。 教師は授業の中での生徒への発問が,指導の意図に基づいて的確になされていたかをワークシートの生徒の記述などから読み取り,検証・改善を図る。また,発問は一方向,また一往復で終わることなく,適切な展開の中で発問に対する生徒の反応を生かし,更に展開させることで内容項目の理解を深める手立てを行えていたかを省察する。 そしてそれと併用して,その授業での道徳性の変化の度合いを尺度評価によって分析する手立ても有効であると考える。やはり,記述式では,その生徒の文章力によって評価が左右される部分も否めないからである。しかし,自らの道徳性の成長を明確に言語化できていないからといって,その生徒の道徳的成長が生じていないわけではない場合も当然ながら存在する。ならば,全ての生徒の変化の自覚を把握するには,有効と考えうるものに関しては,様々な手段を講ずるべきであろう。重要なのは一つの形態に固執せず,あらゆる手立てを講じて,生徒自身の心に迫る試みを行うという姿勢が必要なのである。 (3)尺度による度合い分析,五つの項目 その授業での自らの道徳性の変化の度合いを,尺度評価によって生徒が分析する際,学習効果を測るべきポイントは四点ある。その四点に「道徳教材の出来を探る」一点を加えた五つの項目が,自己評価の度合い分析の項目となる。 まず一点目が,授業が生徒の「道徳的心情を揺さぶり,深められるものであったかどうか」という点である。「道徳的心情」とは「道徳的価値の大切さを感じ取り,善を行うことを喜び,悪を憎む感情」(27)とある。多くの生徒は心身の成長に従い,自らの道徳的価値判断を表明することに消極的になる。ただし,それは道徳的心情が弱まったわけではなく,現実での道徳的価値基準が様々に存在するための混乱が原因である。しかし,道徳性の基準となるべきは道徳的心情であることには疑いはなく,そこの成長の自覚に迫ることは重要である。よってその心情の感受性がどれほどの度合いであったかを「共感・感動することがあったか」という項目によって迫る。 二点目は「ねらいとする道徳的価値についての理解を深められているかどうか」という点であり,生徒一人一人が道徳的価値と向き合う中で,その価値について知識を得たり,他者との磨き合いによって修正したりすることができたかを見取る。いわゆる「道徳的価値理解」である。この度合いについては「深く考えることができたか」という項目によって迫ることとする。 三点目としては,授業が生徒の「自己を見つめ人間としての生き方についての考えを深めているかどうか」という点であり,学んだ道徳的価値を自分とのかかわりでとらえ,更に自己理解を深めることができたかを測る。これを「道徳的価値の主体的把握」という。この度合いについては「自分のこれからの考え方に影響はあったか」という項目によって迫る。 更に四点目が,道徳的価値を自分なりに発展させ,今後の考えや行動に深い実践力を加えられるよう,思いや課題を培うことを測る。これが「道徳的価値実現への意欲の喚起」となる。この度合いについては「考えたことを大切にしていこうと思えたか」という項目によって迫ることとする。 最後に五点目として,道徳教材の出来を探るために「教材・資料は心に響いたか」という項目での尺度評価を行い,教材の迫り方や取り扱いが適切であったかを振り返る材料とする。 以上の五つの項目を五段階で判断してマークする尺度と,記述による振り返りの欄を設定したワークシートを以下に図2-4として示す。 このように五つの項目について「5」(とても)~「1」(ぜんぜん)の尺度による度合い分析を行い,その生徒自身が道徳の授業でどれだけ豊かな学びができたかの指針とする。 (4)度合い分析の意義 生徒は自分がもつ尺度で自分を測り,自分自身の心にどれだけ響いたかという視点でもその授業を振り返る。あくまでその測る基準はその生徒自図2-4 尺度の度合い分析のワークシート 中学校 道徳教育 12

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る