001総教C030705H27最終稿(中山)
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って評価に当たることが肝要なのである。 他教科と同じく,いわゆる学習指導過程における指導と評価の一体化には,生徒の学習状況の把握と評価が不可欠である。そこで今回の研究では,道徳の評価に活用するものとして,生徒による自己評価に,記述での振り返りと,学習深化を尺度で表す度合いでの振り返りの二つの方法を考えた。それに加え,PDCAのサイクルを利用した道徳の時間の運用システムを考案し,その二つの方法を今後の道徳の時間の評価や指導に反映させることも計画した。 システムとセットで考案した理由は,たとえ,どれほど優れた提案でも,単発での取組は継続することが難しいが,システムとして組み込まれるとサイクルが生まれ,好循環が発生すればその運用を継続できると考えたからである。以下に示す図2-1がPDCAのサイクルに道徳教育におけるシステムを当てはめて図式化したものである。 (2)評価を軸とした道徳の年間の流れ 年間の流れを時間軸に沿って説明すると,最初に生徒の道徳性発達段階の分析を行い,現状の把握を行う。把握の手立てについては,教師間での協議や生徒指導に関連するアンケートを利用するなどが考えられる。そしてそこで立てた仮説をもとに,年間の道徳の内容項目の中で,重点項目として重複で取り扱う内容項目を決定する。 例えば,年間35時間ある道徳の授業のうち,道徳の内容項目22項目の全て当てはめることを必須としても22時間の授業分である。よって,その学年で「公正公平,社会正義C(11)」の項目の理図2-1 自己評価を活用した二種類の評価の相関 解が弱い,もしくは,更に理解を深めさせたいと考えた場合,その項目を必須分を除いた13時間のうちに配当し,年間指導計画に反映させていく。 そうすることで,道徳の授業を行ったあと,生徒たちが学んだ内容項目から,どのように成長し,変容することを目指すのかを,教師がより意識するようになる。その観点をもつことで,指導と評価の一体化が実現することになっていく。 生徒がどのように学びを深めたかを分析し,生徒の到達度を測ることが評価である。その評価の軸となるものとして,今回は生徒の自己評価を設定することは先に述べた。特別の教科である道徳の評価の根元は,個人内評価であり,よって生徒自身の心に聴くことが最善であると考える。そして,生徒の自己評価は,間接的に教師の授業達成度の振り返りにつながり,そこからの教材・指導方法の検証が行われるようになる。 年間の道徳の授業への取組の中で,そのような検証が繰り返され,その繰り返しがさらなる良質な授業への改善につながるという循環が生まれていく。循環させることで,より高次のレベルの道徳の授業の提供が可能になるわけである。もはやその形は,同じところをぐるぐる回る「サイクル」という呼び方では適さないかもしれない。サイクルを一周した段階では,かつての出発点よりもう一段階ステップアップした上位に到達していて,まるで螺旋のように高みへ高みへと上方修正される「スパイラル」という呼び方の方が適切であろう。より良質なシステムの補完とさらなる改善への提案を繰り返すことで,更に高い質の道徳の授業へと向上していくわけである。 図2-1に時間経過を加味し,向上へのスパイラルとしたものを以下の図2-2として示す。 図2-2 R-PDCAサイクルの評価のスパイラル構造 中学校 道徳教育 10

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