なっている。それでは,子どもたちが疑問や課題を解決するとき,学校図書館を活用した場合とインターネットを活用した場合,それぞれどのような特徴があるのだろうか。図1-1は,学校図書館とインターネット,それぞれを活用した学びの特徴について筆者の考えをまとめたものである。 これらを比較する中で学校図書館の特徴として筆者が特に注目したのは,次の二点である。 一点目は,図書が一定のきまりに従って分類されている点である。分類によって,図書は一定の系統性をもって並べられる。また,そこに並ぶ一冊一冊の図書には,それぞれの内容に論理性や系統性がある。学校図書館の分類機能を使うことで,子どもたちは,情報の属する分野や系統性を,俯瞰的に見て理解することができるのではないかと筆者は考えた。また京都市では,学校図書館大改造によって,図書分類を日本十進分類法に基づく図書の排架に統一している。日本の多くの図書館では,日本十進分類法によって分類が行われており,国立国会図書館のキッズページにも「日本で一番使われている分け方が,日本十進分類法です」(13)と紹介されている。この図書分類を使いこなすことは,子どもたちにとって,在学中のみならず卒業後も公共図書館などで学びを深める際に活用できる力である。 二点目は,同時に複数のページを並べて比較す中学校 図書館教育 4 ることができる点である。これは,コンピュータの画面上でも可能である。しかし,自分で本を手に取り,ページを開いたり,机の上で並べて比較したりすることで,子どもたちは情報を収集・比較することについて,仮想ではなく現実の体験をすることができる。 しかしながら,インターネットを活用した場合と学校図書館を活用した場合を比較すると,学校図書館を活用した場合には次のようなマイナス面があると考えられる。求める情報を直接的に探せない,時間や手間がかかる,資料が不足している,情報の探し方がわからないなどである。これらの点はマイナス面ととらえられるが,一方で次のようにプラスに転じる可能性があるともいえる。 一点目は,学校図書館法の一部改正により配置がうながされている,「専ら学校図書館の職務に従事する職員」いわゆる「学校司書」(14)や,公共図書館との連携を活かすことでプラスに転じる可能性である(「専ら学校図書館の職務に従事する職員」を京都市では「学校図書館運営支援員」と呼んでいる。以下「図書支援員」という)。図書支援員による資料探しのアドバイスによって,子どもたちは新たな情報に目を向けたり,専門的な情報を知ったりする可能性がある。また,公共図書館と連携することで,子どもたちが活用できる資料の選択肢は大きく広がる。更に,公共図書館を活用して学ぶという選択肢が,子どもたちが生涯学び続ける場の一つとして認識される。 二点目は,求める情報を直接的に探せないという点である。この点については,他の思いがけない発見につながる可能性があると考える。前述した学校図書館での子どもたちの様子にも,求める情報を探して館内を歩き回る姿がある。インターネットでは,情報が検索した単語に関連して表示されることになる。したがって,求める内容の情報か否かに関わらず,受動的に多くの情報を手に入れることになる。しかし,学校図書館では,同じ分野の様々な情報が書架に並んでおり,テーマの異なる隣の本を手に取ることも容易である。しかも,学校図書館内を見渡しながら歩き回ることができ,その過程で目に留まった資料を手に取ることもできる。インターネット検索とは対照的に,子どもが,迷いながらも自らの感覚を使いながら,自らの興味や判断で,能動的に情報を選びとっていくことになる。 三点目は,インターネットを活用して学ぶ際,学校図書館で図書資料を使う体験が役に立つとい図1-1 学校図書館とインターネットそれぞれを活用した学びの特徴(私案)
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