結論が考え出されたのかなど,思考の過程や背景について子どもたちが体験的に学べる活動を授業の中に取り入れることが必要であると考える。 第2節 学校図書館の魅力 (1)自身の授業経験から 子どもたちが主体的に学ぶ授業スタイルの一つとして,いわゆる「調べ学習」がよく行われる。筆者も,担当教科である中学校社会科の授業や総合的な学習の時間に,学校図書館の資料やインターネットの情報を使った調べ学習をした経験がある。その際,子どもたちが提出したレポート等を比較すると,学校図書館で学習したレポートのほうがインターネットの情報のみを使って学習したレポートよりも,子どもたちが自身で構成した意見が述べられ,子どもたちの思いが表現されたレポートになっていた。そこで,改めて学校図書館で学習する子どもたちの様子を思い浮かべてみると,学習結果に影響を与えているのではないかと考えられる様子が以下のようにいくつも想起された。 まず,複数の図書資料を手に取る子どもたちの様子である。子どもたちは関連のありそうな図書を数冊選び,学校図書館にある大机の上に複数冊を広げて調べていた。あらかじめテーマを決めて調べ学習を開始するのだが,調べる過程でテーマを変更して本を取り換える子どもや,求める情報が見つからず,学校図書館内を歩き回り,本を探している子どもも見られた。インターネットの情報を調べる際には,いくつかのウェブサイトを開いていても,途中でどのウェブサイトを見ていたのかわからなくなり,最終的には一つのページまたはウェブサイトで調べ切ってしまう子どもが多いと感じた。 次に,書架の前でテーマに関連する本を読みふける子どもたちの様子である。インターネットの情報を調べる際には,すぐにページを写し取ったり印刷したりする様子が見られたが,学校図書館では,ノートに書き写す前に本をじっくり読んでいる子どもたちの様子が目立った。この様子は,取り立てて本好きとはいえない子どもにも見られた。 更に,お互いの本を覗き込む子どもたちの様子である。多くの学校図書館には大きい机が設置されており,子どもたちは自然と向かい合って学習を進める。その中で,資料の貸し借りをしたり,自分が見つけた情報を見せあったりしている様子が見られた。コンピュータ室ではあまり見られな中学校 図書館教育 3 い光景であった。 他にも,一見テーマに関連のなさそうな本を手にとってから,改めてテーマに関する本を探し直す子どもの様子や,ほとんどの子どもがあきらめたり投げ出したりすることなく学習に取り組む様子など,学校図書館で学習する子どもの様子には,印象的な点がいくつも見られた。 これらの経験から,学校図書館には子どもたちの学習を豊かにする仕組み,つまり学びを広げたり深めたりする仕組みがあるのではないかと考えるようになった。 現代の子どもたちは,生活の中で日常的にインターネット上の情報と接している。したがって,疑問や課題を解決しようとするとき,その答えをインターネット検索によって求めようとすることがほとんどである。インターネット検索には,求める答えに素早くたどり着けるなど様々な利点がある。更に,過去の検索履歴などをコンピュータが分析し,利用者の求めに合いそうな情報を優先的に選び出してくる機能まである。一方,学校図書館で本を使って課題を解決しようとするとき,求める情報がどの本にあるのか,どのページを探せばよいのかなど,煩雑な過程をたどることが多い。求める情報にたどり着くまで,試行錯誤しながら自らの判断で情報を探していくことになる。現代の子どもたちにとって,疑問に対する答えはインターネット上に溢れており,それで十分と感じられるかもしれない。しかし,それ故に安易に正解を求める一面もあるだろう。 学校図書館の資料を使った学習では,前述のように子どもたちの多様な学びの姿が見られた。これはまさに「報告書5」に述べられた「情報や知識を入手し,それを統合して新しい答えを創り出す」学習を,子どもたちが主体的に行っていたといえるのではないだろうか。 そこで筆者は,前節で述べた学力を育成するため,学校図書館の機能を授業に取り入れることが有効であると考えた。 (2)学校図書館のもつ機能 学校図書館の機能として,「児童生徒の『読書センター』機能及び『学習・情報センター』機能という2つの柱」(12)がある。本研究では主に,「学習・情報センター」としての図書館機能に着目して論を進める。 前述のとおり,子どもたちにとっては,インターネットで疑問を解決することが日常的な手段と
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