本研究の趣旨を理解し,教育実践に取り組んでくださった,京都市立高野中学校と京都市立山科中学校の研究協力員の先生方をはじめ両校の教職員の皆様,全面的に協力してくださった両校の学校図書館運営支援員の方々,快くご協力いただいた京都市図書館の皆様に感謝の意を表したい。また,普段とは異なる授業に戸惑いながらも,生き生きと学習に取り組む姿から,学び続けることの喜びや楽しさを改めて教えてくれた両校の子どもたちに,心から感謝したい。 中学校 図書館教育 30 (27) Wikipediaフリー百科事典 https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia 2016.3.4 にできる本が多かった!」などの感想が見られた。日常的に,これらの連携をうまく活用できていない学校も少なくないと感じる。指導者が一人で抱え込んで授業づくりをするのではなく,これらの連携をうまく活用することで,授業に新たな可能性が生まれると考える。 ◆研究全体を通して 本研究では,インターネット等,情報通信技術の発達により,情報が溢れる時代に育った子どもたちに,あえて学校図書館を活用し,物事を多面的にとらえ,多角的な観点から検討したり,様々な情報を組み合わせて新しい考えを創造したりする基盤となる学びの力をつけることを目的として授業実践を行った。このような学びの力は,中学校での学習にとどまらず,進学したり,社会に出て働いたりする中でも学び続ける力につながると考えている。また,学び続ける力とは,単純な学習という意味合いだけでなく,人生において様々な課題に直面した時や,他者と協力して社会を作っていく過程などで,物事の多面性を意識し,課題や状況を多角的な観点から検討したり判断したりしながら,たくさんの情報や立場の異なる考え方を組み合わせて,よりよい解決策を導き出していける力であると考える。 学校図書館を活用した学習は,子どもが自ら学び考える力を引き出し,伸ばす,有効な手段の一つである。これらは正に,今求められる資質・能力である。子どもたちの資質・能力育成のため,各学校に設置されている学校図書館の積極的な活用が求められている。 ◆指導者の関わりについて 本授業実践では,授業者が個別指導にあたる様子が多く見られた。子どもたちは授業者に,「漢民族って何ですか。少数民族とどう違うのですか」「ナチスのことがよくわからない」など資料の内容についての質問や,「テーマがどうしても決められない」「まとめ方がわからない」など課題の進め方についての相談をしていた。このような様子は第3章第1節から第4節の授業実践で,A校,B校の授業者に共通して見られた。授業者は質問や相談を受け,個々の子どもに丁寧に説明していた。また,授業者が子どもと一緒に本を探す様子も多く見られた。一緒に本を覗き込みながら,授業者自身が新しい発見や今までもっていた疑問が解消されたことに喜んでいる場面もあった。更に授業を見学しに来た他の教職員が,子どもが広げている資料をきっかけに,相談に乗ったりアドバイスをしたりしている場面もあった。 学校図書館を活用した学習では,子どもたちが自分の能力や課題の進度に合った資料を選んで学習することができるため,教室での一斉授業に比べ,より個に合わせた学習支援が可能である。また,コンピュータ等の画面と異なり机の上に資料を広げることによって,子どもの学習状況が可視化されやすく,授業者はもちろんのこと,他の教職員までもが,個々の課題にスムーズに対応することができたと考える。また,指導者が子どもと同じ目線で,互いに学び合う時間ももてると感じた。一方,子どもが適切な課題を選んでいるか,その課題を発展させるためにはどのような方向に目を向ける必要があるのか,他の観点から検討することはできないかなど,子どもが学習を進める方向性を見定め,自らの力で学べるようアドバイスをする力量が,指導者側に求められると感じた。 ◆連携を通して広がる可能性 今回の授業実践では,様々な連携協力を得ることができた。図書支援員による授業支援もたいへん大きな力となった。資料の選択,準備はもちろんのこと,資料についてのアドバイスを通じて,子どもたちへの学習支援ができた。また,授業者と図書支援員が打合せを十分に行うことで,より効果的に学校図書館での学習を進める方法を考えることができた。更に,公共図書館からも協力を得ることができ,学習内容を広げ深めることができた。子どものアンケート調査にも「図書室には京都市図書館の本も中学校の本もあるから,題材おわりに
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