◆子どもたちの姿から 中学校 図書館教育 29 の力で学ぶアクティブラーニングが中心となる。アンケート結果からはもちろんのこと,授業を観察する中でも,自ら学ぶことに喜びや達成感を感じている子どもの姿が多く見られた。授業が始まる前の休み時間,学校図書館に走り込んできて「先生!もう調べ始めてもいいですか!」と課題に取り組む姿や,お互いの調べている本やレポートを覗き込み,アドバイスし合う姿,「その資料ならさっき見たよ」と声をかけ合う姿など,自らの課題を追究すると同時に,子ども同士でコミュニケーションをとりながら学びを広げ,深めていく様子が,どの学級でも見られた。子どもならではの疑問や発見,意欲的に学ぶ姿など,指導者が褒めたり応援したりできる場面がたくさんあり,「子どもの学ぶ姿」から指導者が学ぶことも多いと感じた。また,子どもが学んだ内容の中に,指導者が知らない知識や情報もたくさんあり,子どもと共に学ぶ楽しさもあると感じた。研究協力員からも「子どもが様々な情報を見つけてくるので指導者も聞いていておもしろい」「自分で調べることで子どもたちの意欲が高まっている印象があった」などの感想が聞かれた。しかし一方で,指導者が提示する学習課題が適切でなかったり,子どもたちに学習の意図や目標が的確に伝わっていなかったりすると,学びが深まらなかったり,ねらいが達成できなかったりすると感じた。個々が異なる課題を追究することが多い学校図書館での学習は,教室での一斉授業に比べ,途中で軌道修正することが難しい。研究協力員からも「何を求めに学校図書館に来るのかをしっかり示すことが大切」「課題設定の難しさを感じた」などの声が聞かれた。学校図書館を効果的に活用するためには,指導者側にも学習課題を精選し,提示の仕方などを考え,工夫していく力が求められる。 アンケート調査の回答にもあったように,子どもたちの中には,この学習方法がテストの点数に結びつかないと考える子どもが複数いた。パフォーマンス評価など,評価方法の改善,工夫が盛んにいわれている中,現在中学校現場で行われている定期考査やそれらをもとにした成績評価が子どもたちの学力を様々な方向から評価できるものになっているかは疑問である。また,そのような評価を続けてきた結果,子どもたちが「正解を覚えること=学ぶこと」ととらえ,子どもたち自身の学習の幅を狭めているとも考えられる。この点も,指導者側が考えていかなければならない課題である。 この感想からは,子どもたちが今回の学習を通して,複数の情報を統合して自分の考えをまとめるという態度や,興味関心を追究しようとする態度などを身に付けたと考えられる。しかしながら授業実践でのレポートを見ると,仮説を検証する形で課題を追究しているものは少なかった。これは,子どもたちに提示した学習課題に「仮説を立てる」というステップが抜けていたためと考える。このことから,子どもが自ら学びを進める場面では特に,指導者による学習課題の精選や提示の仕方,その後の学習支援の的確さが求められるといえる。 第3節 学校図書館を活用した学習を通して見えてきたこと 今回の授業実践では,子どもたちが生き生きと学ぶ姿を授業のいたるところで目にすることができた。アンケート調査の結果を見ると,子どもたちは概ね学校図書館を活用した学習を積極的かつ肯定的にとらえていた。また,授業を通して「多角的な観点を意識して学習することができた」「一つのテーマを深めて学習することができた」ととらえていることがわかった。これらのことから,学校図書館の図書分類を様々な形で学習に取り入れることは,子どもたちが物事に多面性があることを知り,多角的な観点からとらえる体験をする方法として有効であり,自らの疑問や課題を深く追究する学習にも有効であると考えられる。 しかしながら,前節でも述べた通り,授業後のアンケート調査では,学校や学年ごとに回答内容に差が見られた。三つの段階を踏んで授業実践を行ったA校1年生の回答には,様々な角度から課題をとらえて考えたり,自分で自由にテーマを追究したりすることに,喜びややりがいを感じている様子が見られた。一方,学校図書館での授業実践が少なかった子どもたちほど,この学び方に意義を感じない傾向があった。学年による発達段階の違いや,学習に対するとらえ方等に違いはあるかもしれないが,子どもたちに自分の力で学ぶ喜びや,物事を深く追究し,様々な観点から考えることのおもしろさを伝えるには,意図的,系統的に学校図書館を使った授業を組み入れることが大切である。 学校図書館を活用した授業では,子どもが自らページを選んで使ったりしている子どもが増えた。また,レポートの内容もおもしろいものが増えた。
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