001総教C030705H27最終稿(中町)
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 いつもの「ここはこういうところ」という直接的なことがらではなく,文化や特徴を調べることで,「基礎<応用」というようなことができた  本を使って考える授業は,たくさんの違う意見が出て, いろいろなことがわかり,そのわかったことを一つ一を工夫したりしていくことが必要である。 調査項目「今回の学習を通して感じたことや考えたこと」についての回答の一例を示す。 これらの回答からは,発展的に学べたという実感や,子ども同士が話し合う内容が充実していた様子,わかったことを更に追究し,学んでいった様子がうかがえる。一方で「自分たちで調べる学習は楽しいけど,調べていない事もある」「調べなかった事がテストに出るとわからない」などの回答も複数あった。これらの回答からは,テストや評価の在り方について考えさせられる。しかし,子どもたちの回答からは「自分が調べたところ」と「他の人が調べて自分は調べなかったところ」がどこなのかに気付いていることもわかる。次の段階として,「自分が調べなかったところ」「まだ理解していないところ」について自主的に学習を深めていくような,能動的な学び方ができるよう,指導の在り様を考えていく必要がある。 第2節 個別の課題を追究したレポートから 本節では,第3章第3節で述べた「様々な情報を活用して自ら課題を設定し追究する」授業で子どもたちが作成したレポートの内容分析から見えてきたことについて述べる。 前述の通り,この授業実践では「分類ワークシート」をテーマ設定のために活用した。提出されたレポート数は173,子どもが選んだ国や地域は46であった。また,個々に設定したテーマの重なりはほとんど見られなかった。子どもたちが設定したテーマの例を次に示す。 このように,設定したテーマには多様性がみられる。これは,子どもたちが個々に興味関心のある中学校 図書館教育 28 ことを追究した結果であると考える。また,どのテーマも国や地域に特徴的なものであるといえる。これは,図書資料の内容構成に加え,「分類ワークシート」を活用し,国や地域の全体像から特徴的な事柄へとテーマを絞り込んだことの効果であると考える。 図4-7,図4-8はレポートの一例である。レポート①を作成した子どもは,高緯度にあるロシアではオーロラが見えるのではないかという仮説のもと,このテーマについて学習を進めた。学習を進める中で,分子の衝突など,理科的な内容を掘り下げ,さらにオーロラの色から美術で学習した「光の三原色」について思い出し,吹き出しを付けてレポート中に書き込んでいる。また,レポート②を作成した子どもは,フランスの名所や食文化を矢印で結び,あたかも旅行記であるかのようなコメントをつけてレポートを作成している。これらのレポートからは,子どもたちが学習内容を現実社会の自然現象のしくみや,自身の行動と結びつけてとらえていることがうかがえる。これらは与えられたテーマについてただ調べると いう学習ではなく,学校図書館で得た情報と様々な教科で獲得した学力の双方を活用して,子どもたちが学習の方向性を実社会の課題や自分の行動へと広げていった結果であると筆者は考える。 授業実践から約3ヶ月後,研究協力員に聞き取りを行ったところ,次のような感想が聞かれた。 図4-7 レポート① 図4-8 レポート② ジャズ(アメリカ),自由の女神と移民の国(アメリカ),疫病と戦争(イギリス),ヘブライ語(イスラエル),宗教(イスラエル),料理と食材(イタリア),神話(インド),ザッハトルテとウィーン会議(オーストリア),民族問題(カナダ),文明と都市国家の発達(ギリシャ),コーヒーの生産(コロンビア),紛争と独立(コロンビア),社会福祉制度(スウェーデン),ライン川の利用(ドイツ),ヒトラーとアウトバーン(ドイツ),教育制度(トルコ),鳥(ニュージーランド),アパルトヘイト(南アフリカ),農業の特色(ヨーロッパ州),オーロラ(ロシア),宇宙開発(ロシア)など 話し合えて良いと思う つ具体的に調べた 夏休み(授業実践前)の課題として国調べのレポートを出した時は,ほとんどがウィキペディア(27)などのウェブページから国の基本情報をまる写ししたレポートだったが,冬休み(授業実践後)の課題として歴史人物調べのレポートを出した時は,特に条件を指定しなかったにもかかわらず,本を使っている子どもや,ウェブページでもいくつかの情報を組み合わせたり,より詳しい

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