ります」との言葉が聞かれた。 三点目は図書支援員の関わりによる,個に合わせた学習支援である。ある子どもが「漢字が読めず内容が理解できない」と相談に来た。図書支援員はまず,漢字にルビが振られた本を薦めた。しかし再度「漢字は読めたけど言葉の意味がわからない」と相談に来た。そこで図書支援員は「この本なら写真が多いよ」「この島はこれ以上温暖化が進むと海に沈んでしまうと言われている島なのよ」と本を薦め,子どもは再度課題に取り組み始めた。別の子どもの例も挙げる。この子どもは,普段から学習にあまり意欲的でない様子であった。学校図書館での学習も当初は捗捗しくなかったが,途中から目覚ましい変化を見せ,意欲的に取り組むようになった。授業を記録した映像では,机に伏せているその子どもに対し,図書支援員が自ら,折に触れて声をかけ,一緒に本を探す様子が見られた。また図書支援員不在の授業では,授業開始と同時に「○○先生(図書支援員)はいないの?」と残念そうに叫んでいた。これらの例から,図書支援員は資料についての相談に乗ることを通して,自然と個に合わせた学習支援を行うことができたと考えられる。これは子どもたちの学習効果を高める上で,重要な役割であったと考える。 四点目は学習の効果を高める資料選択と準備である。今回の授業実践では,資料の選択は図書支援員に依頼した。図書支援員と授業者が事前に打合せをし, 授業に必要な資料を学校図書館及び京都市図書館からの団体貸出で準備した。この際,授業者と図書支援員が打合せを十分行い,授業の単元やねらい,子どもたちにつけたい力などを共有しておくことで,学習課題を追究するにはどのような本が何冊必要か,本をどのように配置するかなど,図書支援員の視点からも授業内容を検討することができた。例を挙げると,第1節で述べ た授業では,図3-27のように,京都市図書館から団体貸出を受けた本を学校図書館の本と同じ書架に図書分類ごとに配置した。通常,公共図書館から貸出を受けた本は,学校の蔵書に紛れてしまわないよう,別置することが多い。しかし,今回は図書分類で分けることが授業のねらいを達成する上で重要であったため,図書支援員の協力でこのよう 図3-27 団体貸出の図書を分類ごとに配置 中学校 図書館教育 22 (25) 前掲(24) (26) 前掲(17) p.14 第4章 研究の成果と課題 な形をとることができた。また,両校とも図書支援員からの申し出で,事前に教室での授業を参観してもらうことができ,子どもたちがどのような課題をもって学校図書館で学習するのかを具体的につかんだ上で準備を進めてもらうことができた。 今回の授業実践を通じ,図書支援員が授業に関わることで,子どもたちの学びに様々な効果が得られることがわかった。また,指導者にとっても,学校図書館,図書資料の専門家と連携しながら授業を進めることで,授業の選択肢が広がることがわかった。 (2)公共図書館との連携 第1節から第4節までの授業実践では,京都市左京図書館,京都市山科図書館と連携し,資料の団体貸出を受けた。団体貸出の申込や選書については京都市図書館の担当者と各図書支援員との間で連絡を取り合った。この際,図書支援員から京都市図書館の担当者へ,学習する単元に加え,授業のねらいなど,授業者と打合せた内容が伝えられていた。そのため,例えば第1節で述べた「多角的な観点から課題をとらえる学習」では,各図書分類から満遍なく資料を準備してもらうなど,授業に合わせた資料選択の協力が得られた。公共図書館の団体貸出が子どもたちの学習の助けになることはもちろんであるが,公共図書館の担当者にも授業のねらいが共有されていることで,資料の選択に図書資料の専門家の立場から細かな配慮が加えられ,更に学習効果を高めることができると感じた。本授業実践では図書支援員が連絡の窓口となっていた。このことからも,指導者と図書支援員の間で授業について十分に打合せが行われることが大切である。 第3章では,図書分類を手掛かりに,多角的な観点から課題をとらえる力や,複数の観点から見た情報を関連付けて課題を解決する力をつけるための,具体的な授業実践について述べた。本章では,子どもたちが作成したレポートの内容分析,授業実践の途中または終了後に行った子どもたちへのアンケート等を通してその効果を検証する。更に,本研究を通して見えてきた成果と課題について考察する。
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