第1節から第4節までの授業実践を行うにあたり,図書支援員との連携,京都市図書館との連携があった。本節ではそれらとの連携について述べる。 ことも大切である。 二点目は,新グループで情報を共有する場面で,個人のノートにはまだ共有していない情報があるのに,その情報が全て出されていなかったことである。中には同じ情報ばかり共有されているグループも見られた。「他のグループにない意見を出す」などの指示を加えたほうが良かったのではないかと感じた。このようなところでも,指導者の的確な学習支援の在り方について考えさせられた。 三点目は,学校図書館で調べた内容を情報カードに記入した学級とノートに記入した学級で,新グループでの情報の伝え方に差があったことである。情報カードに記入した学級では,言葉で説明するのではなく,互いのカードを回し,ノートに写している様子が見られた。情報をノートに記入した他の4学級では,このような様子は見られなかった。学校図書館で調べた情報をその後どのように使うかによって,記録する方法に使い分けや工夫が必要である。 四点目は,子どもたちから全く情報の出ない分野があったことである。例えば東北地方の工業については,ほとんどのグループで情報が挙がってこなかったため,子どもたちの主体的な学習だけでは学びが深まらなかった。授業者からも同様の感想が聞かれ,次の授業の中で補足した。子どもたちから挙がった情報で十分に学習内容が深まっているかどうかを見極め,問いかけたり補足したりしながら授業を進める力量も,指導者に求められる。 第5節 授業充実のための連携について (1)学校図書館運営支援員との連携 第1節から第4節までの授業では,両校とも図書支援員の連携協力が得られたため,学校図書館で行ったほとんどの授業で,連携して指導・支援にあたることができた。授業内での図書支援員の主な関わりは,授業者と事前に打合せをし,授業の内容に適した資料を準備すること,個々の子どもたちが課題を解決するための適切な資料を選べるようにアドバイスをすることであった。 本授業実践で,図書支援員との連携により効果が見られた四点の取組について述べる。 中学校 図書館教育 21 一点目は,子どもたちが多角的な観点から課題をとらえるための取組として,図3-26のように図書支援員によるブックトークを取り入れたことで ある。A校では文学やエッセイなどの本を2冊程度紹介した。子どもたちは,一見社会科の学習とは縁遠く感じられる本からも,地域の抱える社会問題や生活習慣, 歴史,風土などが読み取れることに気付いていた。B校では,図書分類ごとに10冊程度の本を準備し,それぞれの書架の前で紹介した。同じく子どもたちは,様々な分野の中に,課題に関連する情報があることに気付いていた。後述する子どものアンケート調査にも,意外なところに情報があることに気付いている記述が見られた。この取組を授業の始めに行うことで,子どもたちは様々なところに課題をとらえる観点があることを実感したのではないかと考える。また,熱心にブックトークに聴き入る様子や,ブックトークの後,紹介された本が借りられるかを図書支援員に尋ねる様子から,子どもたちの学習内容に対する興味関心の高まりとともに,読書に対する興味関心の高まりも感じることができた。 二点目は,図書支援員と子どもとの間で交わされる資料についての質問とアドバイスである。当初,子どもたちが図書支援員に尋ねていたのは「どの本を選べばよいかわからない」「出典の書き方がわからない」などであった。しかし,授業実践を重ねるにつれて「インドのヒンドゥー教の神様について書いた本は他にありませんか」など,自分の調べたい課題をはっきりさせた質問や,自分で探してみたが他にも資料がないかという質問など,質問内容に変化が見られた。また「ハワイについて調べたいが本が見つからない」と相談に来た子どもは図書支援員と一緒にいろいろな本を探す中で,世界の音楽を扱った本の中にフラダンスやフラダンスに使われる楽器のことが書いてあることがわかり,テーマを絞り込んでいった。このように,図書支援員に質問をしたり,アドバイスをもらったりする中で,子どもは自分の課題をより明確に意識したり,追究する内容を絞り込んだりすることができたと考えられる。図書支援員からは「子どもの調べるテーマが深くなっていくので,こちらが勉強しなければと申し訳ない気持ちになクトーク 図3-26 図書支援員によるブッ
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