001総教C030705H27最終稿(中町)
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かり書いていた。図3-25は子どもがノートに書いた単元のまとめの一例である。 他にも,この授業を通して気付いた点がいくつかあった。次に四点挙げる。 一点目は,当然のことながら,学校図書館で有用な情報を集めたグループが学級内にどれくらいあるか,またどれだけ異なる観点からの情報が集まっているかによって,学級全体の学習の深まりに差が出るということである。そのためには情報を多角的に集めることや,複数の資料を使って検討することなど,学校図書館を効果的に活用する方法を子どもたちに示していくことも必要である。調べる図書分類を指定したり,資料の冊数を指定したりするなど,意図的に条件を提示し,段階を踏んで計画的に学校図書館での学習を取り入れる※下線は筆者による 下線部は第3時,新グループで発表し合った情報を使ってまとめている部分である。この例のように,ほとんどの子どもが,発表し合った情報を複数使って単元のまとめをしていた。教科書の文を写しただけのまとめや,「祭りが盛ん」など一つの事実のみを書いただけのまとめは,ほぼ見られなかった。通常の授業では,授業者が板書したまとめをノートに写しているだけという例も多く見られた。また新グループで話し合う際,あるグループでは話し合いの途中に「暖かい愛媛や沖縄でミカンを作り,北海道や青森でリンゴを作って,お互いに交換したらどうか」という話で盛んに議論していた。これらのことから,指導者の説明を聞く受け身の授業ではなく子どもたち自身が仮説を立て,追究するための情報を集め,その結果を子どもたち同士の言葉で伝えあって学ぶことで,学習に対する意欲が高まり,様々な情報を踏まえて東北地方の特色をとらえ,表現する学習ができたのではないかと考える。 とに,補足説明を加えながら授業を進めた。その後,各自100字程度で東北地方の特色について考え,自分のノートに単元のまとめとして記入した。この授業では,ほとんどのグループが東北地方の祭を手掛かりに,農業や漁業についての特色を追究していた。 (2)授業を通して見えてきたこと 第2時,学校図書館で課題を追究する場面では,次のような会話が生まれているグル―プが見られた。 このグループでは,それぞれが資料で調べた内容を共有する中で,既習事項を思い出しながら,子どもたち同士でどんどん学習を深めていた。他のグループでも,果物の栽培が盛んだとわかり,更にその理由を手分けして調べたり,一度情報を共有した後,仮説を裏付けるために足りない情報は何かを検討し,再度探しに行ったりする様子が見られた。 第3時,情報を共有する場面では,グループを組み替え,各自が旧グループの情報を新グループのメンバーに伝えなければならない。そのため,直前に旧グループのメンバーに内容を再確認するなど,個々の子どもに責任感が生まれていた。組み替えたグループでは「雪解け水には栄養分が多く含まれている」「秋田県では地熱発電が行われている」「海沿いに木を植え,風や砂を防いで水田を守っている」など,教科書にはない情報が複数出されていた。このことから,学校図書館を活用した学習を1時間組み込んだことで,教科書だけでは学べないことまで学習内容が広がったといえる。またこれらの情報は,教科書の内容をより深く理解するために有効なものであり,それを指導者が提示して与える形ではなく,子どもたち自身で獲得できたともいえる。このような学び方は,知識の定着や理解への効果だけでなく,学び方そのものを他の単元,他の教科,他の場面で活かせるという点でも意義があると考える。 第3時の最後に単元のまとめをする場面では,ほぼ全ての子どもが,まとめを自分の言葉でしっS:1 「暖流と寒流がぶつかる潮目があってそこに魚が集まるらしい」 S:2 「だから漁業が盛んなんか」 S:3 「あー,海流あったな。名前は何やったっけ?」 みんな ~教科書や地図帳を調べている~ S:1 「親潮と黒潮や!」 S:4 「だからリアス海岸にいっぱい港,つくってるんか」 S:5 「だからそこで,豊漁を願う祭りやってるんや!」 みんな「おぉ~!」 図3-25 東北地方について単元のまとめを書いたノート 中学校 図書館教育 20

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