001総教C030705H27最終稿(中町)
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について調べていた子どもにテーマ設定の理由を尋ねたところ,「イギリスについて調べたいというのは決めていた。キーワードを書き出してみたら『シェイクスピア』というキーワードがあった。もう少しイギリスに関する情報を探そうと図書館内を見て回っているうち,『文学』の本棚でシェイクスピアの本を見つけた。キーワードの中にあったなと思い,テーマにした。シェイクスピアをよく知っていたわけではなかった」と答えた。この子どもが「イギリスについて調べよう」という考えだけで図書館内の書架を見て回っていた場合,「シェイクスピア」に注目し,テーマとして設定した可能性は低いのではないかと筆者は考える。 単純に好きな国や地域を選んで調べ学習をするよう指示した場合,その国(地域)の基本情報でまとめられたレポートが多かったり,その子どもが既に知っていることがテーマになったりしやすいのではないだろうか。しかし,図書分類の観点で一度その国(地域)の情報を書き出すことで,その国の特徴的なものは何かと考えたり,今まで知らなかったことに興味をもち,テーマとして追究したりすることができたと考えられる。したがって,「分類ワークシート」をテーマ設定に活用することは,子どもたちの学習内容を広げたり深めたりする上で一定の効果があったと考える。 本授業実践については,子どもたちが作成したレポートについて分析し,第4章で再度述べる。 第4節 学校図書館で追究した内容を学級全体で共有し学習内容を深める授業 本節では,第2節で述べた「複数の観点から見た情報を関連付けて課題を解決する」授業をベースとし,学校図書館で追究した内容を学級全体で共有し,それをもとに各自が学習を深める授業について述べる。 (1)授業の概要 本授業の対象学級はA校第2学年5学級である。この授業では,学校図書館で得た情報を学級で共有する際,その方法を工夫して授業を行った。 <中学2年地理 日本の諸地域「東北地方」> この単元の大まかな流れを右上図3-23に示す。 第1時は,第1節(1)で述べた中学1年地理「アフリカ州」の学習とほぼ同様に,単元全体のキーワードを「分類ワークシート」に書き出した。 図3-23 日本の諸地域「東北地方」授業の大まかな流れ その後,学級を6名で構成する六つのグループに分け,各グループで東北地方の特色を挙げ説明した。その後,「東北地方にはなぜこのような特色があるのか」についてグループ毎に仮説を立てた。 中学校 図書館教育 19 第2時,学校図書館での授業では,第1時に各グル―プで立てた仮説について,学校図書館の資料を用いて追究した。加えて「みんなに紹介する東北地方についてのエピソード」を一つ以上集めるよう,授業者から指示があった。調べた内容について,5学級中4学級では各自のノートに記入するよう指示した。1学級のみ情報カードに記入するよう指示した。図書資料の使い方について,分類,冊数などの指定はしなかった。 第3時は,第2時までのグループ(以下「旧グループ」という)で調べた内容を学級で共有するため,図3-24のように,旧グループの構成メンバーが一人ずつ入る新グループを6つ作った。 新グループでは,旧グループで追究した内容と「東北地方についてのエピソード」を各々が発表し合い,情報を共有した。このようにして共有した情報をもとに,新グループで東北地方の特色をまとめ,発表した。授業者は子どもたちの発表をもグループ 図3-24 「東北地方」の学習

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