進められていること,三つ目の情報で原因物質である二酸化炭素は別の観点から見ると環境問題の解決に役立つことを調べている。この「情報ワークシート」を見ると,一つ目の情報をもとに論理を展開するため,「一つ目の情報→二つ目の情報→三つ目の情報」と順を追って調べていると考えられる。他にも「地球温暖化の現象→温暖化の原因→温暖化防止のための取組」の順に調べている子どもや,「開発と環境保全」という前時の学習課題を追究している子どもなど,複数の資料を思考の筋道に合わせて活用しているものが見られた。ここまでに挙げた例は全て,複数の異なる分類の資料,または複数の異なる資料から情報を得ている例である。したがって,論理の組立は図書資料の構成によるものではなく,子どもたち自身の思考によるものであると考えられる。複数の資料を活用することで,情報のまとめを自分の頭で構成することが必要となり,子どもたちは論理の組立を学んでいくことができると考えられる。また,それぞれの情報が異なる観点からの情報であれば,学習内容をより広げていくことができ,また様々な観点から課題をとらえた考察ができるようになると考えられる。学校図書館を活用する際には,情報をどのように選び,組み合わせるかについて,指導者が意図的に条件を設定していくことも,子どもの思考力を高める上で有効ではないかと考える。 また,資料を熟読した後,読んでいた資料を閉じて「情報ワークシート」に情報を書く子どもの様子が複数見られた。学校図書館で調べ学習をする際には,図書資料をそのまま写してレポートを仕上げる子どもの様子をよく見かけるが,子どもにとって興味関心のもてる資料を個々に探す時間をとること,課題に取り組む時間を十分に設けることで,情報を自分の言葉で書き記すことにつながったと考えられる。このようにして得た情報は,ただ資料を写しただけの情報より,子どもの中に定着しやすく,また,別の学習場面でも活用される知識となっていくのではないだろうか。 他にも,「分類ワークシート」を手に資料を探す様子,子ども同士で「その資料なら○分類にあるよ」とアドバイスし合う様子など,図書分類を手掛かりに自分の求める情報を探す様子が多数見られた。これは第1節で述べた授業実践の成果と考えられる。 <B校の授業実践> ここからは学校図書館を1時間利用したB校の授業について述べる。 第1時「分類ワークシート」にキーワードを分ける作業は,A校と同様,前回より短時間でスムーズにできた。子どもたちの中からは「考えなければならないので面倒くさい」という発言が少数あった。一見否定的なこの発言からはワークシートに分類する段階で子どもたちが「考えている」ことが感じられる。 続いて南アメリカ州の特色を,キーワードを使って説明する課題を行った。授業者からは「ホワイトボードに文章を書いて説明する」「キーワードのみ赤字にする」と指示があった。図3-17は子どもたちがキーワードを使って説明した南アメリカ州の特色の一例である。 このホワイトボードを示しながら,各グループの 代表が発表した。ホワイトボードに書かれた説明は教科書の文を写したものではないことから,A校と同様,子どもたちが自分たちの言葉で説明していることがわかる。また,植民地支配の影響が言語に表れている点や,鉱産資源に恵まれている点など,アフリカ州での既習事項を活かして説明していることがうかがえる。各グループから挙げられた特色に,授業者が補足説明を加えながら授業を進めた。内容はグループごとに異なるため,結果として単元の内容を全体的にとらえることができる。一方で,子どもたちから挙がってこない特色もあり,授業者が補足した場面もあった。このように子どもたちの説明を活かしながら授業を進めることで,子どもたちにとって,学習内容を自らの力で獲得していく実感が生まれるのではないだろうか。しかし,その説明には的外れなものや,ねらいから逸れるもの,また補足が必要なものもあり,指導者側に,それらを見極め,学習を本来のねらいに導く力量が求められると感じた。 第3時に,学校図書館を利用して課題を追究した。図書館を利用する際には,事前に課題をホワイトボードに示し,子どもたちが作業にスムーズに入れるよう工夫した。B校での授業は図書館利用が1時間に限られていたため,ほとんどの子どもが図3-17 キーワードを使った南アメリカ州の説明(下線部が赤字で書かれたキーワード)※下線は筆者による 中学校 図書館教育 16
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