で個々に課題を追究した。第2時に教科書の追究課題「ブラジルにみる環境問題と対策」について学習し,同様の課題が世界の他地域で起こっていないか,また解決のための方策は何か,自分の考えをまとめるよう指示した。その際,図3-10の「情報ワークシート」を使用した。A校では図書資料を二冊以上使用することを条件とし,可能であれば図書分類の異なる資料を選ぶよう指示した。B校では,情報を二つ以上集めることを目標として示し,可能であれば複数の図書資料を使うよう指示した。 (2)授業を通して見えてきたこと この授業では,A校とB校で学校図書館を利用した時間数が異なるため,2校を分けて記す。 <A校の授業実践> まず学校図書館を2時間利用したA校の授業について述べる。 第1時「分類ワークシート」にキーワードを書き出す作業は,アフリカ州の2/3程度の時間でできた。続いて授業者から南アメリカ州の特色についてグループで考え,ホワイトボードに書いて発表 ちが挙げたキーワードの一例である。このグループは次のように説明した。 この説明の正否は別として,この説明には次の二つの特徴が見られる。一つ目は「言語が多い理由」という,教科書では着目していない内容について説明している点である。このことから,子どもたち自身の考えが述べられているといえる。二つ目は「言語が多い理由」には「様々な民族」がいたことや「植民地」であったことが歴史的背景として考えられるという,アフリカ州での既習事項が活かされている点である。これらのことから,こするよう指示があった。その際,ホワイトボードには文章ではなく,キーワードのみを記入するよう指示があった。 図3-12は,南アメリカ州の特色を説明するために子どもた 中学校 図書館教育 14 の説明は子どもたちが,既習のキーワードにヒントを得ながら,言語活動を通して考えをまとめ,表現した説明であると考えられる。この説明に至るまでの子どもの思考を評価につなげることも可能であると考える。他にも「産業の分類にキーワードが多かった」からという理由で,ブラジルでバイオ燃料を使った車の開発が行われていることを特徴として説明したグループや,「自然科学のキーワードが多く,自然が豊かな地域と言える」と説明したグループもあった。これらの事例からは,学習内容を図書分類の観点で分類することを通して,どの観点から説明することが地域の特色を最も表すことになるか考えていることがうかがえる。 この学習の途中で,授業者があるグループに対し,次のようなアドバイスを行っていた。 このアドバイスから,授業者が「別の分類(分野)の知識と関連付けて考えさせよう」という意図をもって言葉をかけていることがわかる。このアドバイスをしてから数分後に授業終了となったこともあり,今回の学習内容にアドバイスが活かされたか,検証はできなかったが,意図的にこのようなアドバイスを続けることで,子どもたちは様々な観点の情報を結びつけて考えることができるようになるのではないだろうか。 次に第3・4時,学校図書館を利用した授業について述べる。学校図書館で学習する子どもたちを観察したところ,次のような様子が見られた。 環境問題について「工学・工業」の図書分類の資料を読んでいた子どもが,環境問題にはエネルギー資源が深く関わっていると知り,エネルギー資源とはどのようなものか詳しく知りたいと,「自然科学」の図書分類の中から科学雑誌をさがして熟読する様子が見られた。この事例からは,一つの情報を深く掘り下げようとした結果,他の分野に学習内容が広がっていったことがわかる。このように,学校図書館を活用した学習では,当初の学習課題は社会科のものであっても,調べ進めるうちに他教科の分野に関連する課題に発展していく例が複数見られた。更に,子どもたちのワークシートを例に挙げ,説明する。 次ページ図3-13は複数の図書分類の情報を使って課題を追究している「情報ワークシート」の記図3-12 南アメリカ州の特色を説明するキーワードの例 「言語が多い理由は,植民地であり,先住民と様々な民族がいたためたくさんの言語がある。」 (分類ワークシートの「産業」を指さして)「このグループは産業のキーワードがたくさん出てるし,産業的な事は言えそうやね。例えばこの(分類ワークシートの「自然科学」を指さして)地形と関係させたりとかしてみたらどうかな。」
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