図2-5 分類ワークシート 子どもたちが教室の授業や家庭での学習で,このワークシート上に情報を整理していく。すると,情報が目に見える形で,各分類の観点ごとに整理される。そして,このワークシートを手に,学校図書館の書架を行き来しながら情報を追加したり,追究したりすることができる。また,整理した情際,様々な媒体からの情報を活用して,自ら課題解決する力の育成を目的としている。学校図書館や公共図書館の図書資料で得られる情報はもとより,インターネット等で得られる情報についても,それぞれの分類に整理し,原典にあたりながら探究していくことができる。この学習パターンを身に付けることで,将来的に大学図書館や公共図書館,マスメディア,インターネットなどの様々な媒体から得た情報を整理し,関連付け,学び続けることができる力がつくと考える。 以上のように,分類を手掛かりに情報の観点を整理し,関連付けて考える学習の段階を踏んでいく。そのことで子どもたちは,物事を多様な観点から見る力,課題を発見する力,様々な情報を関連付けて思考し,課題を解決する力を身に付けると考えられる。また,授業形態や課題の工夫によって,他者と協働して課題解決にあたる授業を展開することができる。更に,全教科で取り組むことにより,指導者が意図した場合はもちろんのこと,意図的でなかったとしても,子どもたちは各教科の内容を関連させて学ぶことが可能である。 (3) 分類ワークシート 図書分類を枠組みとして活用し,思考の整理をするためには,子どもたちに一定の型を示す必要があると考えた。そこで日本十進分類法の第一次区分で構成した図2-5のような分類ワークシートを作成した。 中学校 図書館教育 10 報を関連付けて新たな問いや考えを作ることも,ワークシート上で進められる。 このワークシートを使う利点は他にもある。異なる学習事項も体系的に情報を整理でき,比較することができる点である。社会科で例を挙げると,地理的分野では地域間の比較,歴史的分野では時代間の比較などが容易にできる。また,地理的分野と歴史的分野を比較・関連させて考えたり,それらを公民的分野に応用したりすることも可能である。このことにより,地域や時代,社会構造などの特徴がとらえやすくなったり,新たな問いが生まれやすくなったりすると考えられる。 しかし,このワークシートを必ずしも使い続ける必要はなく,子どもたちの頭の中に情報を整理する枠組みができれば,ノートに自分で整理するとよいと考えている。教科や学習内容によっては,第一次区分が枠組みとして適さないものもある。その場合は第二次区分や第三次区分などの詳細な分類を活用していくことも考えられる。また,追究する課題に合った枠組みを自ら考えて思考を整理することも必要であると考える。 なお,図書分類の詳しい内容については,国語科の授業で指導が為されている。また,各学校で行われる図書館オリエンテーションでも図書支援員が指導している。本研究の授業実践では,京都市教育委員会作成の「図書活用ノート」(24)を活用することとする。 本章では,授業実践について述べる。授業実践は,京都市立中学校2校(以下「A校」「B校」という)で行った。対象学級はA校第1学年5学級,第2学年5学級,B校第1学年2学級で,いずれも社会科(地理的分野)の授業であった。学校図書館を活用した授業では,京都市図書館から団体貸出を受けた。 (20) 文部科学省「第2期教育振興基本計画」2013.6.14 http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/06/14/1336379_02_1.pdf p.37 2016.3.4 (21) 奈須正裕「子どもの『問う力』を育てる」『指導と評価722号』日本教育評価研究会 2015.2 p.6 (22) 鮎澤修『新現代図書館学講座10 資料組織概説』東京書籍 1998.2 p.207 (23) 『国語1』光村図書出版 2010.2文部科学省検定済教科書p.21 (24) 京都市教育委員会「図書活用ノート」平成27年版 第3章 授業実践から
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