け存在する」「『答え』は『問い』の質に全面的に依存する」(21)と述べている。自ら課題を発見し解決する力とは,よりよい問いを創り出し,追究する力と考えられるだろう。では,どのようなときに「問い」が生まれるのだろうか。子どもたちを見ていると,予想と異なる事態に出合ったときや,知らないことに出合ったときに問いが生まれていると感じる。この体験には,情報との出合いも含まれるのではないだろうか。その情報が正解に導く画一的な情報ではなく,思いがけず出合った未知の情報や,予想外の情報であるとき,更に,自らの手で発見した情報であるとき,子どもの中では新たな問いが生まれやすいのではないかと考える。また,生まれた問いを解決するとき,一つの分野を深く掘り下げる,複数の分野の観点からその事象を見つめ,考察するなど,その事象にせまる切り口が明確であるほうが思考を整理しやすい。それには,あらゆる情報を,分野を意識して手に取れる環境が望ましい。学校図書館は,このような出合いと思考を広げ深める環境を提供できると考える。 更に③について述べる。他者と協働して課題を解決するコミュニケーション能力の重要性は,あらゆる教育の場面で叫ばれている。授業でも積極的に言語活動が取り入れられている。協働学習,言語活動には,様々な手法があるが,場のデザインによって,そのような学習スタイルが自然に生まれる工夫がなされている例もある。京都市でも,学校図書館大改造によって子どもたちが学習しやすい大型の机と椅子が導入されるなど,協働学習や言語活動を行いやすい環境が整えられている。 以上のことから,これからの時代に求められる資質・能力を育成する機能が,学校図書館には備わっているといえる。インターネットが普及する以前は,これらの機能が知らず識らずのうちに活用されていたかもしれない。しかし現代の子どもたちは,生まれた時から日常生活の中にインターネット環境がある。そして,インターネットを経由した多くの情報にさらされている。だからこそ,学校教育の教科授業等において思考力・判断力・表現力を育むために,意図的に学校図書館を活用する必要がある。 第2節 学校図書館を活用した授業 (1) 分類に着目する 前節で述べた学校図書館の利点を活かすため,中学校 図書館教育 8 具体的に何を活用すべきか考えた。学校図書館の様々な機能の中で,特に活用できると考えたのは図書分類である。 学校図書館を含む多くの図書館では,蔵書を一定のルールによって整理している。図書資料は資料分類表に基づいて排架され,検索しやすいように目録が作成されている。鮎澤は「資料分類表を成立させている資料分類法の原理は,知識の分類に準拠している。そのわけは,図書館資料自体が知識の集積であるからである」(22)と述べている。つまり資料分類法は,知識を網羅的に分類できる方法であるととらえることができる。子どもたちが獲得すべき知識も,いずれかの分類に体系づけることが可能である。 資料を組織化する方法は,排架分類,分類目録,件名目録など,多岐にわたる。しかし学校図書館において,子どもたちが利用できる目録を作成しているところが多いとはいえない。手軽に活用できるのは分類記号を用いた排架分類であろう。中学校国語の教科書にも「図書館の活用」として「図書館の本は,日本十進分類法にもとづいて分類されていることが多い。そのおおよそを理解しておこう」(23)と紹介されている。そこで筆者は次のように考えた。日本十進分類法を教科等の学習事項と結びつけ,知識・情報を整理する枠組みとして活用する。更に学校図書館でその知識・情報を深めたり,関連させたりしながら探究型の学習を進める。これらを各教科等で行えば,子どもたちの頭の中で,中学校で学習する内容が体系的に理解され,これらを活用して新しい価値を創造する学習につながりやすくなる。また,授業外の時間でも,子どもたちが自主的に学ぶ手掛かりとなる。この考えに基づき,図書分類を活用した学習モデルを開発した。 (2) 図書分類を活用した学習モデル 前項で述べた図書分類を活用した学習は,いくつかのパターンに分け段階を追って指導する必要があると考えた。そこで,四つのパターンに分けた学習モデルを次ページ図2-1から図2-4に示す。 図2-1は,多角的な観点から課題をとらえることを目的とした学習である。この学習では,学習事項を,図書分類を手掛かりに分類することで,課題の全体像をとらえやすくする。そして,教科書では十分でない情報や疑問をもったことについて,学校図書館で補ったり広げたりすることで,学習内容を深める。学校図書館で得られない情報
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