(人権に関する知的理解に関わるもの) 【人権教育の目標】 一人一人の児童生徒が発達段階に応じ,人権についての意義・内容や重要性について理解するとともに, [自の大切さとともに他の人の大切さを認めること]が できるようになり,それが様々な場面や状況下での具 体的な態度や行動に現れるようにすること。 (下線は筆者による)(15) この目標に示された「自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること」とは,人権尊重の理念について,特に学校教育において指導の充実が求められている人権感覚の側面に焦点を当てて,分かりやすく表現したものである(16)。 (人権感覚に関わるもの) (人権感覚に関わるもの→知識や価値を実践につなげるための助けとなる能力) 知識的側面価値的・態度的側面技能的側面に示された理論の理解を深め,各学校での実践につなげるために,「指導等の在り方編」と「実践編」の二編に再編成され,具体的な実践事例等の充実が図られている(13)。 [第二次とりまとめ]では,「人権教育を進めるに当たっては,人権についての知的理解を深化し,徹底させるとともに,児童生徒が人権感覚を十分に身に付けるための指導を一層充実することが必要だ」(14)と明記されている。このような理念のもとに,学校教育における人権教育の目標を,以下のように示している。 このように,人権教育は,人権に関する知的理解と人権感覚の涵養を基盤として,意識,態度,実践的な行動力など様々な資質や能力を育成し,発展させることを目指す教育である。 図1-1は,[第二次とりまとめ](概要版)で示された人権教育を通じて育てたい資質能力の流れが示されたイメージ図(16)である。 更に,[第二次とりまとめ]では,人権教育を通じて育てたい資質・能力は,<知的側面><価値人権教育 5 ・自由,責任,正義,平等,尊厳,権利,義務,相互依存性,連帯性等の概念 ・人権の発展・人権侵害等に関する歴史や現状に関する知識 ・憲法や関係する国内法,又は「世界人権宣言」その他の人権関連の主要な条約や法令等に関する知識 ・自尊感情・自己開示・偏見など,人権課題の解決に必要な概念に関する知識 ・人権を支援し,擁護するために活動している国内外の機関等についての知識 等々 ・人間の尊厳の尊重,自己価値及び他者の価値を感知する感覚 ・自己についての肯定的態度 ・自他の価値を尊重しようとする意志・態度 ・多様性への開かれた心と肯定的評価 ・正義,自由,平等などの実現という理想に向かって活動する意欲 ・人権侵害を受けている人々を支援しようとする意欲 ・人権の観点からの自己自身の行為への責 任感 ・社会の発展に主体的に関与しようとする態度 等々 ・人間の尊厳の平等性をふまえ,互いの相違を認め,受容する技能 ・他者の痛みや感情を共感的に受容できるための想像力や感受性 ・能動的な傾聴とコミュニケーションの技能 ・他の人と対等で豊かな関係を築ける技能 ・人間関係がゆがみ,ステレオタイプ,偏見,差別を見きわめる技能 ・対立に非暴力的で,双方にとってプラスとなるように解決する技能 ・複数の情報源から情報を収集・吟味・分析し,公平で均衡のとれた結論に到達する技能 等々 図1-1 人権教育を通じて育てたい資質・能力の流れ 的・態度的側面><技能的側面>から構成されるとし,その具体例が示されている(17)。表1-2は,その内容である。 表1-2 人権教育を通じて育てたい三つの側面と資質能力 人権教育を進めるに当たっては,この三つの側面からなる資質・能力を調和的に発達させるように働きかけ,促進することが求められている。 三つの側面のうち,基本計画で指摘されている人権感覚の育成には,<価値的・態度的側面>
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