図4-10 6年意識調査「友だちについて」の集計結果の比較(一部) 質問36「わたしは,友だちや先生の話をきちんと聞いている」に「あてはまる」「少しあてはまる」と肯定的に回答した児童の割合は,7月が89.7%,11月が93.1%で3.4ポイント増加している。質問37「わたしは,困っている友だちがいたら助けている」に肯定的に回答した児童の割合は,7月が86.2%,11月が89.6%で,3.4ポイント増加している。質問39「わたしは,友だちのよいところを見つけるのが得意だ」に肯定的に回答した児童の割合は,7月が62.0%,11月が68.9%で,6.9ポイント増加している。 成されてきていると考察する。 6年生の学級では,学級の児童全てを高めること,コンプレックスを感じることがあったとしても,それを跳ね返すような強い力をもつ児童に育てることを意識した学級経営が行われていた。授業の中でも,児童間のつながりを重視し,互いの存在を尊重し合える人間関係づくりに重点が置かれ,相手意識をもって学習活動に取り組むような指示が多くかけられていた。そこで,主に他者に対する意識の在り方や関わり方などを見取る「友だちについて」の結果の変容から考察する。図4-10は,6年意識調査「友だちについて」の7月と11月の集計結果を比較したものの一部である。 第3章第2節で取り上げた事例Ⅵ,事例Ⅸ,事例Ⅺは,全て,ペア学習やグループ交流の際の他者に対する意識のもち方や行動についての発言である。日々の授業に協働的な学びの場を取り入れるなどの働きかけをしたことで,他者との関わりの中で,児童が自らの力を発揮するとともに,他者に対する肯定的,受容的な意識の育成や行動の在り方につながっていると考察する。 以上の考察から,教師が学級経営を行う上で大切にしてきたことは,その発言を通して,確実に児童に伝わり,その意識や行動に影響を及ぼしていることが明らかになった。だからこそ,教師自身が人権尊重の理念について十分に理解し,自らの言動が児童生徒の豊かな人間性を育成する上で,(%) (n=29) 図4-11 教師の発言を支える三つの視点からの児童理解 三つの視点とは,「個としての児童理解」,「集団の一員としての児童理解」,そして,「学級の集団理解」である。 人権教育 29 重要な意味をもっていることを自覚して,日々の教育活動に当たらなければならないのである。 (3)学級での人権教育の充実に向けて 人権教育とは,人権は全ての人々に等しく存在するということを,理解できるようにするとともに,それぞれの人権が守られる社会をつくるための意欲と行動力を身に付けていくための教育である。人権教育の定義の中で使われている涵養という言葉は,「水が自然にしみ込むように少しずつ養い育てていく」という意味である。日常生活の中のあらゆる場と機会をとらえ,人権とはどのようなものか,人権を尊重し合うとはどうすることなのか,人権は自分だけでなく他者にもあるということなどを体験的に学ぶことで,その重要性を実感し,自らの態度や行動に反映させることができるようすることを目的としている。それゆえに,人権教育の充実には,個別の人権に関わる事象を一つずつ取り上げる1時間単位の授業や,人権月間や人権週間などの集中・集約的な取組の実践も重要である。しかし,それにとどまらず,教師が日々の学級経営において,児童生徒の人権を守ることを常に意識し,全ての児童が大切にされている状態が実現させること,実現できているかを確認することも同じくらい重要である。 調査内容を分析する中で,学級担任の発言を「自分の大切さとともに,他の人の大切さを認める」ことができるような人権感覚の育成につなげるためには,図4-11に示した三つの視点からの児童理解が必要であると感じた。 「個としての児童理解」に基づく学級担任の発言は,学級担任と児童個人をつなぐはたらきをもち,信頼関係を築く上でなくてはならないものである。しかし,個人を意識する余り,学級全体が見えていなかったり,個人と集団との関係性が十
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