001総教C030705H27最終稿(菊谷)
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学習規律に関わる内容 学習活動に関わる内容 1年 3年 6年 「上手に挨拶できましたね。」 「先生が言わなくても準備ができていますね。」 「(めあてが)速く書けるようになりましたね。」 「よく覚えていましたね。」 「きのうのワークシートを見ましたが,みなさん,すごくしっかりと書けていました。」 「ずいぶん~ができるようになってきましたね。」 このような流れでほめられたことで,A児は学級担任だけでなく,学級の友だちからも認められたと感じたと思われる。この経験が,自信となるだけでなく,学級の友だちに対する好感となって,「自分を認めてくれる大切な存在」という認識につながるのではないだろうか。また,他の児童にとっては,友だちを肯定的に評価するという体験により,友だちのよさを意識すると同時に,所属する集団のよさを認識する機会にもなったと思われる。また,この場面での児童の表情や学級の雰囲気などから,友だちを肯定的に評価することの心地よさを感じていることが伝わってきた。このような体験の積み重ねが,互いに認め合うことに価値を見出し,その価値を志向する児童の育成につながると推察する。 児童による自己評価や相互評価の目的やその効果が様々な場で語られているが,学級担任が適切な場面で相互評価を取り入れることで,児童間のつながりを深めることができると感じた。 次に,学級担任の発言のタイミングと児童の学習意欲との関係について述べる。 事例Ⅳや事例Ⅵで取り上げたように.導入の段階でほめる言葉がかけられた授業では,挙手の回数が増えたり,普段以上に自信をもって学習活動に臨む姿が見られたりした。更に,授業の分析から,導入の段階で学級担任が児童をほめた授業では,1時間を通してほめることが多くなる傾向があることがわかった。表4-1は,各学級,14時間観察した授業の中で,学級担任がほめた回数の1授業時間当たりの平均値と,導入でほめる言葉がかけられた授業の平均値を表したものである。 表4-1 ほめる回数の平均値 導入の段階でかけられるほめる言葉には以下のような特徴があった。 1授業時間当たりの平均出現回数(n=14) 8.2回 4.2回 3.7回 ほめる言葉 導入でほめる言葉がかけられた授業での平均出現回数 9.6回(n=10) 5.8回(n= 7) 3.9回(n= 8) 人権教育 26 1年生,3年生では,授業開始時の挨拶の仕方や準備,めあて確認の際の学習態度など,学習規律に関わる行動について,ほめられることが多かった。一方,6年生では,前時の学習を称賛する内容や,単元を通しての児童の成長を称賛したり価値付けたりする内容のものが多かった。 ほめられた際の児童の表情や,その後の学級の児童の挙手の回数や学習に向かう態度などから,学級担任のほめるという行為と児童の学習意欲との間には関係があると推察することができた。 図4-6は,学級 担任の発言のタ イミングと児童 の学習意欲との 関係を表したも のである。 学級担任の承 認や称賛,肯定 的な価値付けが 学習意欲を高め たり持続させた りすることにつ ながる。したがって,これらの言葉が授業の導入,展開,まとめのそれぞれの場面でタイミングよくかけられることで,1時間を通して,児童が意欲的に学習に向かうことができると考えられる。 (4) 他者に対する意識を高める「授業をすすめ児童の他者に対する肯定的な意識の育成につながる「授業をすすめる発言」について,事例Ⅹと事例Ⅺから考察する。 3年生の国語の事例Ⅹ,6年生の国語の事例Ⅺともに,グループ活動や交流学習の中で,他者に対する意識をもつように促す指示や,それを行動化させるための具体的な指示である。このような指示は,ペア及びグループ交流の進め方を指示する際にも多く存在した。 学級担任の「~しましょう」「~してください」という指示によって,児童は行動することが多い。つまり,指示することは,児童の行動に直接つながるのである。だからこそ,他者に意識を向けることを促す指示や,他者を配慮した行動や行為を促す指示が,授業の中で意図的にかけられることで,他者との協働的な学びが実現し,その体験の積み重ねによって,児童の他者に対する意識が少しずつ高められていくと考える。 る発言」 図4-6 発言のタイミングと児童の 学習意欲との関係

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