④ 担任:その後,しゃべることがなくなった時に, ⑤ 担任:しゃべっていない人の言葉を聴き出してね。 この事例は,①指示する⇒②児童の活動⇒③注意する⇒④指示する⇒⑤指示するという流れになっている。③の注意の中には,学習のめあての再確認や活動内容の修正などが含まれている。 本時は,児童が前時に記したワークシートをもとに,3,4人のグループで感想や意見を交流し,それぞれの考えを深めることを目的としていた。 ここからは,「指示する」というカテゴリーの① 担任:15分間交流します。グループの形になって ください。 ② 児童:(グループ交流) ③ 担任:報告会じゃないよ。交流ですよ。順番に 書いてることを喋って,はい次,はい次。 これでは意味ないしね。それを,何回やっ ても深まらないよ。だから,友だちが言わ はったことに対して,「なるほど,ぼくも そう思う。」「ここの文章とセットで考え たら,もっとこういうこと分かるな」とか, それが大事です。 例えば優しいって言わはったら,「優しい だけでは分からへんし,もうちょっと詳し く言って」とか,「すごいってどういうこ となん。」とか,お互いに突っ込まない限 り,深まらないし,広まらないよ。もう6 年生なんだから,報告会はやめてください。 誰かが「この言葉は,全員共通やったから, もうちょっとこの言葉にこだって,1分間, 各自考えよう」と言って交流するとかして ください。 グループの中で,小さい授業をやってる感 覚をもってほしいと思います。そういう意 識をもってやってください。いいですか。 3人いるのに2人しかしゃべってないのもあ かんよ。「必ず,どう思う?」って聞き出 してください。 人権教育 21 れを,何回やっても深まらないよ」「お互いに突っ込まない限り,深まらないし,広まらないよ」という発言によって,その問題点を指摘している。そして,点線で示したように,学級担任がイメージしている交流学習の具体的な例を挙げて,活動の目的を再確認している。更に,破線で示したように,よりめあてに即した活動に高めるために,例を挙げて指導し,最後には,波線で示したように,担任の思いや願いも伝えている。 ④の「指示する」発言は,全ての児童が,学習の主体者となることや,児童同士が互いを意識し合うことを促すものであり,学級担任が本時の中でグループ交流を取り入れた意図が,改めて確認できる発言である。 学級担任がこの発言をする前のグループ交流では,友だちの意見を自分のワークシートに書き加えることに集中する児童が目立った。友だちの意見の中から,自分が取り入れたいと思うものを見つけることは,人権の視点からみると,「他者のよさに気付き,認める」ということにつながる行為である。しかし,本時のグループ学習の一番のねらいはそれではなかった。それらをメモすることに終始し,それぞれが,友だちの発言に対して自分の考えを伝え合うという活動がなければ,新たな気付きや発見は生まれない。ここでは,児童の学習に広がりや深まりをもたらすために,グループでの交流会が設定されたのである。そこで,学級担任は,具体的な例を示しながら,このグループ交流の意図や目指す姿を明確にし,再度,共通理解させたのである。 その後の全体交流の際には,19人の児童が交流を終えて考えたことや感じたことなどを発言していた。その発言の中には,「私たちの班は,~というところにすごく惹かれて・・・。」と,交流を通して,自分たちのグループがどのような考えに至ったのかを発表する児童もいた。 この学級担任の発言は,児童に相手意識をもつことの大切さと,その意識をどう行動に移すかを具体的に示している事例である。 中から,二つ事例を記載する。 【指示する】 〔事例Ⅹ〕 次頁,図3-17は,3年 国語:発表会に向けて指示を出している場面である。 ここでは,以下のような学級担任の発言があった。 本時のねらいとしていることと児童の学習内容や学習活動の様子に違いを感じた学級担任が,活動の目的を再度確認し,修正する目的でかけられた注意と指示である。 ③「注意する」では,まず,下線で示した「報告会」「順番に書いていることを喋って,はい次,はい次。」と,児童の活動の様子がどのようなものであるかを具体的に知らせ,二重下線で示した「そ
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