001総教C030705H27最終稿(菊谷)
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児は,A児の発表を最後まで聞いていた。そして,B児が発表を終えた段階で,今度は「あぁ・・・」と声をもらした。そこで,学級担任は,改めてB児に対して,二重下線で示したように「最後まで聞いたら,Aさんの話,分かったでしょ。最後まで聞いてね。」と言葉をかけたのである。 B児に対する最初の発言には,二つの注意が含まれている。一つは,A児の発言の内容,そのものに対する注意である。友だちの発表に対して発せられた否定的な発言(反応)がよくないと注意しているのである。そして,もう一つは,発言のタイミングに対する注意である。 人の話を最後まで聞くことや,自らの発言の内容や発言するタイミングを考えることは,「他の人の大切さを認めること」そのものではないだろうか。他者に対する意識及び行動の在り方を考えさせるこの発言は,児童の人権感覚の育成につながるものだと考える。 A児の発表を最後まで聞いたB児が「あぁ・・・」とつぶやいたのは,学級担任の注意の意図がしっかりと伝わっていたからではないかと推測する。このB児の様子を見た学級担任は,二つ目の発言をすることで,再度,B児に一つ目の注意の意図を確認したのである。この二つ目の発言をする際の担任の表情は笑顔で,とても優しくかけられていた。また,友だちの反応によって答えを中断されたが,最後まで発表したA児は,最後に学級担任から「ありがとう,Aさん」という言葉をかけられて,明るい表情になっていた。 このやり取りの中で,筆者が注目したのは,学級担任の二重線で示した二つ目の発言である。笑顔でかけられたこの発言は,児童に学級担任の発言の意図が伝わったことを確認した上で発せられたものである。 授業中の教師の発言は,全て教育的な目的を有していると考えている。だからこそ,伝えるという行為にとどまることなく,教師は,自分の発言の意図が児童生徒にきちんと理解されているかを確認することが重要である。 また,発言の際の教師の表情は,児童に強い印象を与える。その印象によっては,教師の伝えたい意図よりも「叱られた,怒られた」という印象を児童に強く残す可能性もある。その意味において,教師の発言は,どのような言葉を使うかということだけでなく,その前後の児童の様子をしっかりと見取り,発言の意図が伝わっているかを確かめることも重要であるとわかる事例である。 15分間交流します。グループの形になってください。 その後,しゃべることがなくなった時に,誰かが「この言葉は,全員共通やったから,もうちょっとこの言葉にこだって,1分間,各自考えよう。」と言って交流するとかしてください。 グループの中で,小さい授業をやってる感覚をもってほしいと思います。そういう意識をもってやってください。いいですか。 しゃべっていない人の言葉を聴き出してね。3人いるのに2人しかしゃべってないのもあかんよ。「必ず,どう思う?」って聞き出してください。 図3-16 6年 国語 交流学習の場面 人権教育 20 指示する 全体 (交流) 報告会じゃないよ。交流ですよ。順番に書いていることをしゃべって,はい次,はい次。これでは意味ないしね。それを,何回やっても深まらないよ。だから,友だちが言わはったことに対して,「なるほど,ぼくもそう思う。」「ここの文章とセットで考えたら,もっとこういうこと分かるな。」とか,それが大事です。例えば,優しいって言わはったら,「優しいだけでは分からへんし,もうちょっと詳しく言って。」とか,「すごいってどういうことなん。」とか,お互いに突っ込まない限り,深まらないし,広まらないよ。もう6年生なんだから,報告会はやめてください。 注意する 全体 〔事例Ⅸ〕 図3-16は,6年 国語:交流学習の場面である。

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