① 担任:昨日,どんなお勉強をしたか覚えています ④ 担任:まだ,お話してはるのに,途中で「え」っ ⑤ A児:答えは,(中略)で,昨日,~さんは, A児 3×2をしたら6になって・・・ 昨日,どんなお勉強をしたか覚えていますか。 ~さんが,いい考え方を発表してくれましたね。 本時は,「敬老の図画」を描く授業であった。そのため,児童の机上には,この日,家庭から持ってきた祖父母の写真とコンテが置かれていた。児童は,授業が始まる前から普段あまり使うことのないコンテを触ったり,写真を友だちと見せ合ったりしており,いつもよりざわついた雰囲気の中で授業が始まった。学級担任が発問したり説明したりしている間も,何人かの児童の様子が変わらなかったため,説明を聞かせたるために,児童に注意したのである。 筆者がこの発言の中で特に注目したのは,「写真を触りません。」や「コンテを触ってはいけません。」といった否定的,命令的な表現ではなく,下線で示したように「触る時間ですか。」という疑問形の表現が使われていたことである。 注意することで,児童の学習態度や活動内容を正すことや,児童の意識を学級担任に集中させることができる。しかし,その表現や声の大きさ,表情などにより,児童に必要以上の緊張感をもたらす場合もある。そして,それが,その後の児童の学習意欲や学習内容にマイナスに影響を及ぼすことも考えられる。それゆえに,注意する際には,学級の実態を考慮し,どのような注意の仕方がより効果的かを考えることも重要である。特に,低学年においては,自分の何がいけなかったのかを考えさせることが自己理解につながり,自らの行動を主体的に考えることができる児童の育成につながると考える。つまり,児童に注意する教師の発言を疑問形にすることで,児童の自己理解や自らの行動について主体的に考えるきっかけになると考えられる事例である。 〔事例Ⅷ〕 図3-15は,3年 算数:児童が発表している場面である。( )(かっこ)を使うかけ算について,指名された児童が説明している際に,別の児童が発言した内容を学級担任が注意している。 発問する 全体 注意する 児童 個人 図3-15 3年 算数 児童が発表している場面 人権教育 19 ② A児:3×2をしたら6になって・・・ ③ B児:えっ? ⑥ B児:あぁ・・・ ⑦ 担任:最後まで聞いたら,Aさんの話,分かった ここでは,以下のようなやり取りがあった。 この事例は,①発問する⇒②児童の発言⇒③他の児童の反応⇒④注意する⇒⑤児童の発言⇒⑥他の児童の反応⇒⑦注意(その他)という流れになっている。 B児は,A児の発言内容が間違っていると思ったようで,その発言の途中で「えっ?」という声を発した。これを聞いたA児は,発言を途中でやめてしまった。そこで,学級担任はB児に対して,下線で示したように「まだ,お話してはるのに,途中で『えっ』って言うのはおかしいよ。」と注意している。その後,A児は発言を再開した。この後,BB児 えっ? A児 答えは,(中略)で,昨日,~さんは,2×(3×2)をしてはりました。 B児 あぁ・・・。 か。~さんが,いい考え方を発表してくれ ましたね。Aさん。 て言うのはおかしいよ。 2×(3×2)をしてはりました。 でしょ。最後まで聞いてね。 ありがとう,Aさん。 まだ,お話してはるのに,途中で「えっ」って言うのはおかしいよ。 最後まで聞いたら,Aさんの話,分かったでしょ。最後まで聞いてね。 ありがとう,Aさん。
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