001総教C030705H27最終稿(菊谷)
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(交流タイム) 一回目より,交流の仕方がよくなっていますね。 聞いている4人が,意見を出し合っていますよ。机の形がいいですね。常に発言者に意識を向けて,共有しようとする姿勢がいいですね。 ① 担任:交流の中心は内容についてにしてください。 ③ 担任:意識して意見をつなげてください。 ④ 担任:聞いている4人が意見を出し合っています 交流の中心は内容についてにしてください。 意識して意見をつなげてください。 図3-11 6年 国語 グループ交流の場面 前貢の事例は,①発問する⇒②児童の反応⇒③ほめる⇒④児童の発表⇒⑤ほめる⇒⑥⑦児童の発言という流れになっている。 下線部の「覚えている人がたくさんいますね」という発言は,学級担任の発問に多くの児童が挙手したことに対してかけられたものである。この発言が,児童の学習に向かう意欲を高めることにつながり,この後も,この授業では,発問に対して挙手する児童の数が多かった。その後,指名されたA児の答えに対して,よい説明の仕方であると価値付けた学級担任の発言は,「上手に説明できました。」ではなく,二重下線で示したように「上手に説明してくれましたね。」であった。これは,A児ではなく,学級の児童全体に向けた発言である。この発言に対して,他の児童は「うん」とうなづいたり,「ほんまや」や「ぼくも同じように思っていた。」と発言したりしていた。 友だちのよい面を学級の全員で承認することを促した学級担任の発言によって,A児には「学級のみんなに認めてもらった」という経験になり,他の児童には「友だちのよいところを認める」という体験になっているのである。学級での,このような体験の積み重ねによって,児童は自尊感情を高めたり,他者に対する肯定的な意識をもつことの大切さを学んだりしていくのだと考える。 このようにみてくると,教師のほめ方によっては,ほめる対象とする児童だけでなく,周囲の児童の人権感覚の育成にもつなげることができると考えられる事例である。 〔事例Ⅴ〕 図3-11は,6年 国語:グループ交流の場面である。児童は,4,5人のグループをつくり,それぞれが前時に書き上げた意見文の内容について交流していた。 指示する 全体 ほめる 全体 人権教育 17 ここでは,次のような学級担任の発言があった。 この事例は,①指示する⇒②ほめる⇒③指示する⇒④ほめるという流れになっている。 この学級では,授業の初めに全員で本時のめあてを確認した後,児童一人一人が,めあてに対する自分の具体的な学習目標をワークシートに書き込むという活動を,日常から行っている。また,教室の側面には単元計画が常掲されているので,児童は一時間一時間の学習内容やめあてをしっかりと認識して学習に臨んでいた。 学級担任は,下線部のように「一回目より,交流の仕方がよくなっていますね」と,学級の全てのグループの活動をほめている。その後,指示の発言をはさんでかけられた二重下線の「聞いている4人が意見を出し合っていますよ。」「机の形がいいですね。常に発言者に意識を向けて共有しようとする姿勢がいいです。」という発言は,特定のグループの交流の様子を,交流学習の好ましい姿として取り上げて価値付けている。学級全体に向けてかけられたこの発言は,他のグループにもこの姿を広めようという教師の意図が感じられた。この発言の後,他のグループでも,発表者に近づいてその意見に耳を傾けたり,発表を受けて自分の考えや感想を伝えたりするなど,それまで以上に,友だちの意見に対する積極的な関わりが生まれ,活発に交流する児童の姿が見られた。 このような児童の姿につながった発言には,図3-12のように,グループ交流の様子を細かく観察するという学級担任の見取りが存在した。 学級担任が 好ましい姿と 判断した児童 やグループに 肯定的な価値 付けをするこ とで,他の児 童は,それを 自分に取り入 す。 よ。机の形がいいですね。常に発言者に意 識を向けて,共有しようとする姿勢がいい ですね。 図3-12 交流の様子を観察する学級 担任 ② 担任:一回目より,交流の仕方がよくなっていま

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