① 担任:今日はこれで終わりますが,また,次に ② 担任:筆箱,クーピーを片付けてください。 ③ A児:(筆箱,クーピーを片付ける。) ④ 担任:Aさん,はなまるやね,待ち方。 ⑤ 担任:挨拶をしたら,はがきを前に持ってきて この事例は,①説明する⇒②指示する⇒③児童の行動⇒④ほめる⇒⑤指示するという流れになっている。 A児 後ろの人がボール,持つねんで。 B児 前にならえ がんばるよ。 よし。 ボール,お願いね。 いける? ~さん,急いで。 ここやで。 こわい? ビブス誰が持ってくるの? ~さん,ごめんね。 完全に,準備ができるようになってきましたね。 ここでは,次のようなやり取りがあった。 本時は年賀状の書き方に ついての学習であった。 児童は,このやり取りの 前に学級担任が準備した画 用紙に,図3-6で示したよう な年賀状を書いていた。 授業終了の時刻が近づき,担任が片付けの指示を出したが,指示が聞こえていなかった児童や,聞こえていたにもかかわらず,年賀状を書き続けていた児童がいる中で,A児は指示されたことをやり終えて,話を聞く準備ができていた。 このことから,学級担任は,この発言を学級の児童全員に聞かせ,児童の意識を自分に向けさせようとしていることが推測できた。更に,これに続けて,二重下線で示したように「口を閉じて,手は膝に,足は床に」というA児の姿を言葉にした際にも,声の大きさを変えず,少しゆっくりと発言していた。その様子から,学級担任が他の児童にもこの姿を促そうとしていることがわかった。 この後,他の児童は机上を片付け,A児のように姿勢を整えて担任の指示を聞くことができた。 続きをやりましょうね。 もう一枚(年賀状が)書けるんですよ。 口を閉じて,手は膝に,足は床に。 えらいですね,Aさん。 ください。 図3-7 児童の様子を確認する学級担任 学級担任は, 片付けの指示を 出した後,図3-7 にように,児童 の様子を観察し ながら,1分程 待っていた。そ して,下線で示したように「Aさん,はなまるやね,待ち方。」と発言している。この発言は,学級の児童全体に届くような少し大きな声でかけられていた。 (略) ゴールは,先に運び出した人から,奥に持って行ってください。 じゃあ,向こうで集合しますね。 図3-8 1年 体育 集合した場面 人権教育 15 他の児童のこの姿から,学級担任の一人の児童に対する発言が,周囲の多くの児童に影響を及ぼしていることがわかる。この場面で学級担任は,できていない児童に対して直接注意するのではなく,できている児童をほめることで,学級の児童に指示したことができるようにしたのである。 このようにみてくると,教師の一人の児童に対する「ほめる」という発言が,学級の児童全体に広がり,事例Ⅰのように,友だちの良さに気付き,自分の行動に反映させるという働きがあることが確認できる事例である。 〔事例Ⅲ〕 図3-8は,1年 体育:集合した場面である。全員でコートの準備をした後,児童はチームごとに集まり,整列をして担任が来るのを待っていた。 全体 指示する 児童 準備を終えたグループから ほめる 全体 児童 図3-6 児童の作品
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