【検証方法】 授業中の学級担任の発言を観察,調査し,発 言が児童の人権感覚の育成にどのように影響 しているかを分析する。 本研究は,A小学校の第1学年,第3学年,B小学校の第6学年の計2校,3学級の協力を得て行った。以下は,本研究の調査内容である。 第1節 学級担任への調査 (1)児童,学級の実態調査 【研究仮説】 権感覚を高めるものがあるであろう。 学校における教育活動の多くは,教師による言葉を介して行われる。学級担任が,児童一人一人の人権を常に尊重して教育活動を行っている学級では,それらが学級担任の言葉を通じて児童生徒に伝わると考える。そして,その言葉の力によって,学級の人間関係や全体としての雰囲気が人権尊重の精神のみなぎった環境になるのではないだろうか。そのような学級の中で,児童生徒の人権感覚も高まり,互いを認め合い,尊重し合えるなかまづくりができると考える。しかし,教師の発言が一部の児童生徒に偏ったものであったり,十分な人権感覚に基づくものでなかったりする場合には, 児童生徒に誤ったものの見方や判断基準をすりこむことも考えられる。そこで,本研究は,上記の仮説のもとに,学級における学級担任の発言に注目して,以下の方法で検証する。 (18) 前掲(11)p.3 (19) 前掲(12) p.7 (20) 前掲(13) p.5 (21) 前掲(12) p.7,前掲(13)p.5 (22) 前掲(11) p.5 (23) 平成27年度 『全国学力・学習状況調査報告書 児童生徒 質問紙』2014.8 p.51 http://www.nier.go.jp/15chousakekkahoukoku/report/question/ 2016.3.4 (24) 近藤卓『基本的自尊感情を育てるいのちの教育』金子書房 2014.4 p.8 (25) 梶田叡一『自信とプライドを育てる(教育フォーラム<20>)』1997.6 人間教育研究協議会編 金子書房 1997 p.6 (26) 辻平治郎「自己意識と他者意識」北大路書房 1993.4 (27) 前掲(2) p.4 (28) 前掲(2) pp..6~8 (29) 前掲(12) p.10 第3節 研究仮説と検証方法 これまで述べてきたことを踏まえて,本研究を進めるに当たり,以下の仮説を立てた。 授業中の学級担任の発言には,児童生徒の人(30) 河村茂雄 『日本の学級集団と学級経営』図書文化 2015.5 p.13 授業観察を始める前に,学級の児童の実態や学級の雰囲気,学級経営方針などを把握しておくことが発言分析を行う上で必要であると判断したため,「児童,学級の実態」についての調査を実施した。研究協力員である3人の学級担任それぞれに,児童一人一人のこれまでの学校生活(学習面・生活面)の様子や友だち関係など,学級担任として学級経営上,意識及び配慮していることを聞き取った。また,各学級の集団としての特性や,調査研究を始める前の時点で各担任が課題と考えていたことなどを含めて学級経営方針についても聞き取り,どのような意識をもって日々の指導に当たっているかについて調査した。 図3-1は,研究協力員である3人の学級担任が, 学級経営を行う上で特に意識していることをまとめたものである。 -A校 第1学年- ・児童の学習時間を保障し,45分の授業を充実させる。 ・学習規律の定着を図る。 ・友だちのことを考えられる児童に育てたい。 -A校 第3学年- ・保護者と連携を図りながら,個々の児童の課題を明確にして指導を行う。 ・児童の声に耳を傾け,発言を大切にする。 ・学級を児童が楽しいと思える場所にしたい。 -B校 第6学年- ・常にクラス全体を見て,クラス全体を高めていく。 ・たとえコンプレックスがあったとしても,そ れを跳ね返す力のある強い児童に育てたい。 図3-1 学級経営を行う上で意識していること 人権教育 11 第3章 調査の実際
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