この目的を達成するために,京都市では,各学校現場での人権教育を,以下に示す四つの視点から推進することが重要であるとしている。 【人権教育の四つの視点】 (1)人権としての教育 ・教育を受ける事自体が重要な人権であるという認 ・子どもたちが人権についての理解・認識を深め, (4)人権のための教育 ・学校教育活動全体を通して,すべての人々の人権 京都市では,人権教育は,全ての教育活動を通じて行うものであり,日常の教育実践が最も大切にされなければならないと考えている。そのために,各学校では,教育活動の全てを,この人権の四つの視点でとらえた人権教育全体計画が作成されている。 【人権教育の目的】 これまで述べてきた京都市の学校における人権教育の流れをまとめると,右上の図2-3となる。 自らの進路を切り拓き,自立して生活できるとともに,人権の大切さを理解し,人権尊重を規範とした日常の行動がとれる子どもの育成,すなわち,「人権という普遍的文化」の担い手を育成すること (education as a human rights) 識に立って,就学の機会均等の保障はもとより,子どもたちの「生きる力」を養う豊かな教育を受けることが保障されているかを問う視点 (2)人権を通しての教育 ・学校教育全体を通して,子どもたちが人権の大切 (education in or through human rights) さを日常的に感じながら,学習することができる環境を,学校や学級において作り出すことができているかどうかを問う視点 (3)人権についての教育 (education on or about human rights) 人権を守る意欲や態度をはぐくむとともに,人権 にかかわる問題解決のために行動できる力を培う ことができているかどうかを問う視点 (education for human rights) が尊重される社会を実現し,その社会を担い得る 人間として成長する子どもの育成を目指す教育実 践がおこなわれているかどうかを問う視点 (28) (強調は筆者による)(27) 図2-3 京都市の学校における人権教育の流れ 人権教育 9 京都市 各学校 各学級 教育員会によって示された指針や各学校で作成された人権教育全体計画によって,京都市の人権教育の骨格は明確に示されている。しかし,各学級において,これらがどのように実践されているかについては,十分な点検・検証がなされていないという現状にある。 (2) 人権感覚の育成と人権教育の四つの視点 これまで,学校現場では,「人権についての教育」として,人権に関する様々な授業や取組が行われてきた。生活科,社会科,総合的な学習の時間,道徳,特別活動の時間,学校行事などで,児童の身近にある人権問題や,個別の人権課題についての知識,理解につながる授業や取組が多数,実践されている。これらの授業や取組は,児童生徒の人権に対する理解や認識を深めることにつながったと考えている。しかし,いじめなどの問題が,今もなお学校現場を含めた児童生徒を取り巻く環境の中に存在することを考えると,それらの理解や認識が,必ずしも児童生徒の人権を守る意欲や態度,人権に関わる問題解決のための行動力にはつながっていないといわざるを得ない。では,なぜつながらないのか。 その原因として考えられるのが,基本計画が指摘している児童生徒に人権感覚が十分に身に付いていないということではないだろうか。では,学校現場において,人権感覚を身に付けるためにはどのような取組が有効なのであろうか。 筆者は,この疑問を解決するためには,まず,人権教育の四つの視点と人権に関する知的理解及び人権感覚の育成との関係について整理することが必要であると考えた。そこで,改めて人権教育の四つの視点の内容を見直した。 次頁,図2-4は,筆者が考えている人権教育の四つの視点の内容を踏まえて整理した,人権に関する知的理解及び人権感覚と人権教育の四つの視点との関係をまとめたものである。 •《学校における》人権教育をすすめ るにあたって •人権教育全体計画 •学級経営方針
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