図1-8 具体的な連携内容の実施率 図1-7からは,連携方法の明確化に関して,「とてもそう思う」「そう思う」と肯定的に回答した割合は,設置校が80.4%に対し巡回校が61.1%と,19.3ポイントの差がある。このことから,設置校に比べ巡回校の方が,連携方法を明確に確認されないまま,連携が進められていることがわかる。そのため,巡回校にとって担当者の役割が不明確となり,連携の効率化を図るまでに至っていないのではないかと考える。 これらのことから,担当者は通級エリア校との連携を重要であるととらえている。しかしながら,設置校での連携に比べ巡回校との連携の方が,効率的に進めにくく,連携方法についても明確になっていない現状があるといえる。 ④連携における課題 では,担当者は通級エリア校間での連携を具体的にどのように進めているのだろうか。図1-8は,設問「具体的な連携内容についてお聞きします」という具体的な連携内容の実施有無を実施率としてまとめたものである。 設置校と巡回校とを比較して見ると,実施率に突出した差が生じている連携内容がある。それは,63.5ポイント差の「⑤校内委員会(個別ケース会)」,57.8ポイント差の「⑥個別の指導計画の作成や評価・修正」,そして22ポイント差の「④授業公開」である。校内委員会(個別ケース会)は,各者が情報交換を行い,個別の指導計画の評価・修正を行う場である。そのため,「⑤校内委員会(個別ケース会)」と「⑥個別の指導計画の作成や評価・修正」は連動することが多い。また,「④授業公開」は,学級担任をはじめ教職員へ通級指導教室での授業を公開することである。ではなぜ,このような突出した差が生じるのだろうか。 図1-9は,指導形態の違いによる担当者と学級担任との連携の構図を示したものである。 自校通級の場合,担当者は設置校に常時勤務している。そのため,指導の前後やその他の時間を利用し,学級担任と直接出会って情報交換をする直接的な連携を進めやすい環境にある。一方,他校通級の場合,設置校へ通って来る対象児童に指導し,巡回による指導の場合,担当者は巡回校を訪問して通級の指導を行っている。また,巡回による指導においては,担当者は指導後に連絡ノートの記入を終えると設置校へ戻るといった,限られた時間内での勤務形態となっている。そのため,特に事前に相互の時間調整が必要な内容については,連携を進めることに困難が生じる場合が多くなる。更に,担当者は設置校を含め複数の通級エリア校に関わっているため,直接的な指導以外の時間における関わりが一層難しくなっている。 このことから,担当者が通級エリア校間において効率的な連携を進める上で,物理的な環境や勤務形態が要因となり,通級エリア校間で必要な連携が進めにくい現状があるといえる。そこで,事前に連携の窓口役や内容,更には年間の流れなど連携方法について巡回校と協議することが,設置校と巡回校との連携内容の実施率の差を解消することにつながると考える。物理的な環境や勤務形態の要因を克服し,指導の効果を高めるためにも,連携方法について通級エリア校間で協議し,実態に応じた計画性のある組織的な連携に努めていくことが求められている。 また,この他にも,通級エリア校間での連携を進める上での課題がある。次ページ表1-2は,設問「連携を進めるにあたり,課題と感じられていることはありますか」の記述内容から,筆者がカテゴリー別に整理してまとめたものである。 表1-2から,設置校,巡回校ともに連携を進める上での共通の課題となっていることは,学級担任との情報交換の時間捻出,定期的な連携の確保,そして,時間割の調整の三つである。 …担当者 …学級担任 …窓口役 図1-9 指導形態の違いによる連携の構図 小学校 特別支援教育 6
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