001総教C030705H27最終稿(景山)
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平成25年に制定された障害者差別解消法は,平成28年4月1日から施行され,「合理的配慮」について,法的な効力が発生する。「合理的配慮」は,「障害者の権利に関する条約」において提唱された概念であり,通級による指導は,その一つとして位置付けられている。そして,その指導は子ども一人一人の状況に応じて,個別に提供されるものである。また,子どもの学習権を保障する観点から多様な学びの場の確保のため,「基礎的環境整備」として通級指導教室の設置が行われている。 本市小学校においては,今年度,「ことばときこえの教室」が26教室,「弱視(アイリス)教室」が2教室,そして,「LD等通級指導教室」が52教室(うち,「ことばときこえの教室」併用校が10教室)が設置されている。本研究の対象とするLD等通級指導教室は,昨年度より14教室増え,設置率31.3%と,全国の設置率13.4%(平成26年度調査)を大きく上回っており,環境整備を着実に進めている。また,本市には自校通級に加え,他校通級,巡回による指導の三つの指導形態があり,LD等通級指導教室設置校(以下,「設置校」という)以外の児童においても,通級による指導を受けることができるシステムをとっている。そのため,本市の児童が必要に応じて通級による指導を受けられる環境について整備しているといえる。 本研究は,LD等通級指導教室担当者(以下,「担当者」という)による教室運営に関する教育実践を通して,「LD等通級指導教室の『運営』&『活用』ガイド」の作成を目指す。まず『運営』とは,普通学級に在籍する発達障害のある児童,もしくは可能性のある児童への支援として,担当者が通級による指導をすることである。そして,支援の一環として,校内支援,保護者支援,他機関連携を図ることでもある。次に『活用』とは,普通学級に在籍する発達障害のある児童,もしくは可能性のある児童の学習や生活上のつまずきを改善・克服するため,通級による指導を受ける場を設定することである。そして,その児童や保護者が教育相談を受けることでもある。更に,児童の実態把握や普通学級での指導・支援の検討をする校内委員会(個別ケース会)を開催することである。つまり,『運営』と『活用』との両面から担当者の役割や運営内容などを明記したガイドを作成することが,連続性のある多様な学びの場を児童に対して保障することになると考える。 (1) 景山功一「No.574 LD等通級指導教室の『運営』&『活用』ガイドの構築-児童の読字・書字のつまずき把握と指導・評価を通して-」『平成26年度研究紀要』京都市教育委員会 京都市総合教育センター 2015.3 p.28 本市では,「 」の用語を次の意味で使用している。 ・「普通学級」…通常学級 ・「ことばときこえの教室」…小学校の普通学級に在籍する言語障害または聴覚障害のある児童を対象とした通級指導教室 ・「弱視(アイリス)教室」…小学校の普通学級に在籍する弱視の児童を対象とした通級指導教室 ・「LD等通級指導教室」…小・中学校の普通学級に在籍し,発達障害のある,または,可能性のある児童生徒を対象とした通級指導教室 小学校 特別支援教育 1 昨年度の研究では,『運営』に焦点を当て,筆者が作成した年間運営計画及び通級による指導への道筋(試案)に基づき,設置校における担当者による「読字・書字」のつまずき把握と指導・評価の実践を行った。その結果,一連の実践は児童の「読字・書字」のつまずきの早期発見・早期支援に効果的であることが認められた。また,児童の実態把握や指導・支援の検討の際に,校内支援の中心的な存在として担当者が役割を果たしていたことが明らかとなった。(1) 一方,昨年度の研究は設置校にとどまっており,設置校以外での実践を進められていない。また,筆者は担当者ブロック連絡会に参加する中で,担当者から「巡回による指導を行う学校(以下,「巡回校」という)との連携が難しい」という声を聞くことが多くあった。これらのことから,設置校以外に在籍する児童への効果的な指導に関する新たな課題も感じている。 そこで,今年度は,昨年度の研究を踏まえ,担当者と設置校及び巡回校を含む学校群(以下,「通級エリア校」という)との連携に着目し,効率的な連携の在り方について研究を進める。LD等通級指導教室の『活用』につながる担当者の役割や動きについて整理し,連携の具体的な方策を明らかにすることが,担当者だけでなく学級担任をはじめ全教職員が連携について共通理解し,指導・支援につながると考えたからである。 基礎的な環境が整備されつつある本市において,LD等通級指導教室の効果的な担当者による『運営』,教職員による『活用』を推進したい。そこで,2年間の研究の成果として「LD等通級指導教室の『運営』&『活用』ガイド」の作成をしたい。 はじめに

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