<その他の教員> <担当者> 指導について事例提示をしながら紹介した。 具体的な事例については,B研究協力員が巡回による指導の対象となっている児童を中心に,児童の困りと目標,指導方法を関連させて提示した。そして,使用している教材を児童の実態と指導のねらいと合わせて紹介したり,実際に教材を体験できるワークショップの機会を設けたりすることで,より確かな理解につながるように工夫した。 下の枠は,総合育成支援教育部会や校内研修会の参加者への聞き取り内容をまとめたものである。 参加者への聞き取り内容からわかるように,総合育成支援教育部会への参加や校内研修会の開催は,LD等通級指導教室の啓発に加え,通級の目標や活動内容の確認をする機会になっていた。そして,その他の教職員にとっても,困りを感じている児童の実態把握や指導・支援の検討といった,校内全体での総合育成支援教育の推進にもつながる効果があったことが確認できた。また,担当者からの聞き取り内容からは,担当者と学級担任だけでなく,巡回校の教職員との人間関係をつなぐ場の共有になっていたことがわかる。 日程調整の工夫が必要となるが,担当者の能動的な働きかけは,LD等通級指導教室の理解の深まりや児童への指導・支援の充実とそれを支える人間関係の形成につながることがみえた。 次項は,連携計画に沿って実践した日常的な連携について述べる。 ※( )は,筆者によるもの LDT:クラスで点字の学習を頑張っていたんですね。X児が話をしてくれたので褒めました。 CT :意欲的に活動していて,いい調べ学習が進められたんです。今度,クラス発表をする予定なので,日程が許せば,発表の様子を見に来てください。 LDT:ありがとうございます。今日の通級,集中トレーニングの活動を頑張っていたんですが,ファイルを忘れてお楽しみの活動ができずで…。 CT :ファイルのコメント,読みました。持ち物の準備,課題ですね。声かけの支援,続けていきます。 X児:対象児童,CT:学級担任,LDT:担当者 小学校 特別支援教育 20 図3-11 学級担任との情報交換 <学級担任や窓口役> ・普段,先生(担当者)と話す内容は,子どもの様子が中心になっていて,使用教材の目的など聞く機会がなかった。通級での活動が理解できた。 ・通級での指導の様子を知ることで,自分の思いが文章として書けているなと思った時に,「通級がクラスにつながっている」と思うようになった。 ・校内研修会を通して,教職員との関係の構築も図られ,同じ立場に立った関係づくりになったと思う。 ・子どもが何で困っているのか,どのような支援が必要なのか,クラスをイメージして話が聞けた。 ・わからないことを,他の視点で補ってもらえた。 ・(総合育成支援教育部会は,)通級の役割や内容を知る場になったと思う。 ・巡回校の先生との距離感が近くなった。 ・(対象児の)学級担任以外の先生との顔のつながりができ,通級を意識してもらえていると実感した。 (3)日常的な連携 ◆直接的な連携「学級担任との情報交換」 図3-11は,学級担任と担当者が直接的な連携を通して,情報交換を進めている様子である。通級による指導の前後や休み時間,放課後の時間帯に行った。 巡回による指導を行う児童の場合,在籍学級や家庭での日々の様子を把握しにくい状況にある。そのため,学級担任との情報交換である直接的な連携は欠かせない。しかし,通級による指導は学級担任が学習指導を行っている時間帯に並行して実施するため,日常的に直接的な連携を行うことは難しい。また,校内委員会(個別ケース会)とは違い,計画的に行うことも難しい。そのため,職員室で連絡ノートを記入したり,在籍学級へ対象児童を送ったりして,意図的に学級担任と直接的に情報交換ができるように工夫した。 以下は,直接的な連携の様子の一場面である。 日々の対象児童の様子や手立ての共有などは,連絡ノートを介しての間接的な連携内容として行われることが多い。間接的な連携の場合,相互のやり取りがその場ではできず,一方向の情報提供にとどまることが多くなる。直接的な連携をすることで,上記の枠内のような双方向のやり取りを通して,対象児童の様子や成果,課題,必要な手立ての共有を,学級担任と担当者間でできる状況が生み出されていた。 このことから,直接的な連携は,双方向のやり取りができ,タイミングのいい情報共有ができる。そして,在籍学級とLD等通級指導教室における指導・支援をつなぐ日常的な連携となることが確認できた。
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