は,通級による指導だけでなく在籍学級における指導・支援について,多面的に対象児童をとらえた検討ができ,効果的に進められていたことを示すものである。また,破線で示した内容は,個別ケース会を通じて,相互の学びの場での目標や内容の理解につながったことを示すものである。 これらのことから,進行役の割り当てと進行表の作成,そして個別の指導計画の資料提示をしたことは,PDCAサイクルに基づく,指導・支援の評価と次期の目標や具体的な指導・支援の検討といった個別ケース会の目的を果たすことにつながっていたと考える。また,個別ケース会を通じて,学級担任と担当者との相互理解につながる協議を進められることが確認できた。 一方,連携計画の中で,およその実施時期を決めただけでは日程調整が困難であったり,時期を変更して実施したりした事例もある。つまり,状況に応じて相互が柔軟に対応して日程調整などをすることも必要だと考える。 ◆直接的な連携 「総合育成支援教育部会及び校内研修会」 通級エリア校Aでは,既存の組織として巡回校Ⅰ校,Ⅱ校が定期的に開催している総合育成支援教育部会へ,担当者であるA研究協力員が参加した。担当者の参加のねらいは,通級による指導を行っている児童の情報共有に加え,困りを抱えている児童への指導・支援の検討である。 Ⅰ校は,総合育成支援教育主任と管理職に加え,各学年の代表1名が構成メンバーになっており,毎月の開催を行っている。Ⅱ校は,低・中・高学年編成になっており,各学年団の担任に加え,管理職やその他の教職員が分散して部会を構成しており,年間3回の開催をしている。部会は,総合育成支援教育主任もしくは総合育成支援教育部員の進行役の下,学級に在籍する児童の情報交換後,指導・支援の検討を行う流れである。 図3-8は,A研究協力員が参加した総合育成支援教育部会の様子である。総合育成支援教育部会では,在籍学級からの情報に加え, A研究協力員から通級による指導の具体や児童の様子,普通学級でできる指導・支援の方法など,具体的に資料を提示しながら紹介した。内容とし図3-9 総合育成支援部会で提示された資料(一部) 小学校 特別支援教育 19 ては,通級指導している児童の現状や変容,指導内容の具体を情報提供したり,通級による指導の評価の仕方を前期末に提示したりした。 また,部会では,通級による指導を行っていない児童の情報交換や指導・支援の検討も必要に応じて行われる。A研究協力員は,「部会の中で挙がった事例に応じた支援方法の情報や資料の提供をします。次回になることもありますが,情報交換していただければと思います」と部会の中で依頼し,専門的な知見から詳細な実態把握につながる情報収集や具体的な指導・支援の助言などを行っていた。更に,前回の部会で情報として挙がっていた児童に関連する障害特性や困りの改善として考えられることについて,苦手とする活動・学習とその支援方法などについてまとめ,図3-9に示すような資料を用意し情報提供した。 A研究協力員は教材と合わせて資料を用い,障害特性の理解に加え,普通学級の中でできる指導・支援やLD等通級指導教室において実施している指導方法の提示を行った。そして,巡回校は事後の教職員での報告会の中で,総合育成支援教育主任が資料として活用し,校内全体に拡げる時間を設けていた。また,部会終了後には,担当者へ個別に質問をしたり,他の担任と共に相談をしたりする場面も見られた。 通級エリア校Bでは,巡回校Ⅲ校,Ⅳ校の総合育成支援教育部の発案により,担当者が講師となり総合育成支援教育に関する校内研修会を開催した。担当者が研修講師を務めるねらいは,発達障害や総合育成支援教育に関する基礎知識に加え,通級による指導の事例紹介を通して教職員の児童理解と指導・支援の促進を図ることである。 図3-10は,B研究協力員が講師を務めた校内研修会の様子である。研修会では,LD等通級指導教室の概要と指導形態,そして実際の 図3-8 総合育成支援教育部会 読み書き困難 傾向にある事例 図3-10 校内研修会 自閉スペクトラム症 傾向にある事例
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