001総教C030705H30大栢最終稿
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第1節で述べた英語教育における課題に向き合い,自分の考えや思いを話したり書いたりして表現するという英語での発信力のみに重点を置くのではなく,「聞いたり読んだりして理解したことを,自分の言葉で相手に分かりやすく表現し,相手意識をもって伝え合う」というコミュニケーションに焦点を当てた領域統合型の言語活動を取り入れた授業を展開した。 がら,相手意識をもって表現の仕方を工夫し,自分の気持ちや考えを伝えるために英語で積極的にコミュニケーションを図ろうとすることができる生徒」の育成を目指す。 そして,二つ目の視点である学びの可視化を通し,生徒の学習過程においては,「目標を見据えた上で学習を進め,課題を克服するための学習方法を選択するなど主体的に学びへ向かう生徒」を目指したい。 (2)1年次の研究について 1年次の研究においては,複数領域統合型の言語活動を中心とした授業設計と,それぞれの言語活動において生徒の学びを可視化するという大きな二つの視点から研究を進めた。 図1-8は1年次の研究の具体である。 図1-8 1年次の研究の具体 中学校 英語科教育 5 また,その授業に即して生徒の学びを可視化するための工夫を加えた。生徒の学習意欲を促すための形成的評価に着目し,自己評価と相互評価を通して,生徒自身が自分の今の到達状況と伸びを把握でき,それを指導者が共有・個人内評価することが生徒の学習意欲を高めることにつながり,結果,主体的に英語でのコミュニケーション能力を高めようとする生徒の育成につながると考えた。 この二つの視点から授業を構築することで,英語への興味だけではなく,英語で伝える力がついたことや,相手と英語で会話できることの楽しさを実感・体感して初めて,もっと話したい,もっとわかりやすく表現したい,伝え合いたいという主体的に学ぼうとする姿勢を育成できるのではないかと考えた。そして,主体的に学びへ向かうには,まずは学習意欲を喚起することが大切であり,その学習意欲の向上を促すことのできる授業を設計し,実践した。 図1-9は複数の領域をつなぐ言語活動の関連図である。 図1-9 領域をつなぐ言語活動の関連図 複数の領域を統合した言語活動を行う際には,それぞれの領域をつなぐ手立てが必要だという仮説を立てた。そしてその手立てとして,パラフレーズ練習,システム化された音読練習,インタラクション練習,そしてパフォーマンス課題を実践に組み込んだ。 聞いたり読んだりする受容領域をもとに,その内容について話したり書いたりする発信領域では,受容したことをそのまま発信するだけではなく,自分のことばで言い換えたり,簡潔に伝えたりすることが領域統合型の言語活動が目指す自然なコミュニケーションの形であると考えた。そこでパラフレーズ練習を組み込んだ。パラフレーズとは,わかりやすく言い換えたり,同じことを別の表現で言い表したり,長い内容を簡潔にまとめて表現97 図1-7 本研究の目指す生徒像と授業設計の視点

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