図4-5 わからない語句があっても 読み続ける力を測る小テスト benefactorというこれまで生徒たちが目にしたこ とがない語句がテーマになっている。そのテーマを見た時点であきらめるのではなく,地道に読み進める中で手掛かりを見つける姿を目指した。解答時間を5分に設定し,生徒たちはどこまで読み進めたかに印をつけていき,benefactorが何を表すのかを推測した。そして,その推測の根拠となる場所に線を引いた。C層の生徒たちの中で最後まで読もうとした生徒は73%,学年の全生徒が第三段落目までは到達し,最後まであきらめずに必死に読んでいる姿が見られた。指導者からは,「A・B層の生徒たちは,わからない語句があっても読み進めようとする耐性は以前からあったように思う。しかし,C層の生徒たちがこのテストに対峙している姿を見て,リスニング・ラウンドやリーディング・ラウンドでのスモールステップを踏んだ取組の成果だと実感している。」という回答を得た。実際,Unit 5の実践後アンケートにおいても,94%が「わからない語句があっても読み続けようとしている。」と回答している。 122 図4-5はA中学校において実施した小テストである。 中学校 英語科教育 30 平成29年 p.78 このような姿を,現行学習指導要領下の観点Ⅰ「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」に反映し,コミュニケーションに関心をもち,積極的に言語活動を行い,コミュニケーションを図ろうとする姿勢を評価していくべきであると考える。 おわりに 主体的な学びとは,「学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる『主体的な学び』が実現できている」(34)ことと,新学習指導要領解説総則編には述べられている。どのような英語の授業を展開すれば,この主体的な学びが実現し,本研究のテーマである主体的にコミュニケーション能力を高めようとする生徒の育成を図れるかに焦点を当てて研究を進めてきた。 本研究では,実践協力校において,複数の単元で実践を進めたが,その短いスパンの中でも生徒たちが主体的な学びへと向かっている様子を垣間見ることができた。それは,英語使用者としての将来の自身の姿をイメージし,その目標に少しでも近付けるように見通しをもって取り組み,その結果や過程を振り返る中で次の学びへとつなげようとする姿である。「パフォーマンステストを通して,言語は経験と数を積み重ねないと身に付くものではないと実感した。なので,毎日家で学習するようになった。」「Unit 4のパフォーマンスよりUnit 5はよいものにしたかった。家でも班員と連絡を取って改善したり学校でも話し合ったりして,向上心をもって取り組んだ。結果,すごく達成感があった。次も頑張ろうと思う。」「ペアになっている相手に迷惑がかからないように,家で何回も練習しました。」「テレビで外国人が話しているのを見たときに自分で意味を推測しながら聞くようになったら,ちょっとわかってきて楽しかった。」これらの生徒の振り返りから,よりよい英語でのコミュニケーションに向けて主体的に取組を始めたことがわかる。中には内発的動機の高くはないものもあるが,このような過程を積み重ねることで,自身の伸びを確認し,英語でのコミュニケーションに喜びや楽しさを感じるようになってきたのではないかと期待したい。 最後に,本研究の趣旨を理解し,ご協力いただいた京都市立岡崎中学校,京都市立凌風小中学校の校長先生をはじめ,教職員の皆様,そして生徒たちに,この場を借りて心より感謝申し上げる。 (34)文部科学省『中学校学習指導要領 解説 総則編』東山書房
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