001総教C030705H30大栢最終稿
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英語の授業で図1-1のような領域を統合した言語活動を「行っている」と回答した指導者(選択肢「よくしている」「どちらかといえば,している」合計)は41.2%で,対前年度1.2ポイントと微増しているものの,未だ50%に届いておらず,複数領域を統合した言語活動の充実が十分ではないことがわかる。 現行学習指導要領は,英語を通じて言語や文化に対する理解を深め,積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度や4技能の総合的な育成をねらいとして改訂され(1),学校現場では様々な取組を通して指導の充実が図られてきた。しかしながら,新学習指導要領解説外国語編(以下,解説)では英語教育における課題が多面的に指摘されている(2)。 結果は,「行っている」と回答した指導者(選 (1)複数の領域を統合した言語活動 ①複数の領域を統合した言語活動における課題 新学習指導要領実施に向け,教科書の編成が大きく変わるであろうことが予想される。どのような変貌を遂げるのかと期待に胸が膨らむ一方で,筆者の中学生時代と何が変わってきているのかを比較してみたくなり,久しぶりに中学校時代の教科書を引っ張り出してみた。オールカラーの今日の教科書とは違い,白黒ベースであるが,その中で時折二色刷りのページが出てくる度に気持ちが高揚したことを思い出す。当時,この教科書での学習を通して,どのような力がついたのだろうか。一番に思い浮かぶのは,教科書本文の内容を正確に読み取る力である。そのために,本文をきれいに写し,いかに正確に訳せるかに全精力を注いでいた。文章内容を読み取る力は大切である。しかし,内容理解に留まるのではなく,生徒には教科書本文から得た情報や表現を活用して自分の意見を伝える力をつけてほしいと考える。 本研究は,生徒にとっても指導者にとっても一番身近で大切な教材である教科書を活用し,いかに生徒にコミュニケーション能力を付けるかという持続可能な英語指導をコンセプトに実践を進めたものである。 第1章 英語教育に求められているもの 第1章では,英語教育における課題の一つとしてその不十分さが指摘されている「複数の領域を統合した言語活動」や,新学習指導要領でもその必要性が強調されている「見通しと振り返り」の二つの現状と課題について詳しく見ていくとともに,それらの必要性や本研究の方向性について述べる。 第1節 英語教育における課題と目指している 方向性 現行学習指導要領で学んだ生徒の英語力を測定 し,調査結果を学校での指導や生徒の学習状況の改善・充実に活用することを目的として,全国の中学3年生約6万人(国公立約600校)を対象に行われた「平成29年度英語教育改善のための英語力調査」結果から,授業における統合型言語活動の指導に対する指導者の意識について窺い知ることができる。 図1-1は「聞いたり読んだりしたことなどについて,問答したり意見を述べ合ったりするなどの活動を行っている」かを問うたものである。 また,図1-2は同調査において,「話の内容や書き手の意見などに対して感想を述べたり賛否やその理由を示したりなどすることができるよう,書かれた内容や考え方などをとらえる活動を行っている」かを問うたものである。 択肢「よくしている」「どちらかといえば,している」合計)は38.6%(対前年度1.1ポイント増加)に留まっている。ここからは,聞いたり読んだりしたことをもとに自分の考えを述べることを最終目標として,その前提となる読解段階をとらえる言語活動の充実を図る必要性があることがわかる。 93 はじめに 図1-1 聞いたり読んだりしたことに基づく, 図1-2 発信領域につなげることを踏まえて, 中学校 英語科教育 1 話し合いや意見交換などの言語活動 (3) 受容領域における言語活動を工夫しているか(4)

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