ここでは,要点をとらえる活動として,キーワードを読み取ったり,各段落のタイトルについて考えたりした。 図3-14はリーディング③の詳細をつかむために情報を整理して読むことを目的としたワークシートの一部である。 図3-14 詳細を捉えるためのワークシート① このように,リスニングと同じく,読む段階においても何を目的に読むのかを絞ることにより,生徒はざっと通して読めばいいのか(scanning),ある特定の情報を得るために読むのか(skimming)等の目的意識をもってリーディングに取り組むことができたと考える。 図3-15は1年生で使用したワークシートである。 図3-15 詳細を捉えるためのワークシート② 1年生Unit 8「イギリスの本」を扱った単元(補足的に実践をした単元)において,話に登場する絵本の主人公や作者の性別をどこで判断するかを問うたものである。前単元で代名詞を学習した生徒たちが,本文中の代名詞を判断材料としながら詳細を読み取れるようにした。このように言語形式に詳細を当てながら読んでいくパターンも考えられる。生徒たちは,「ここにherって書いてあるやろ?男やったらhisになるやん?」などと,ペアでやり取りしながら活動していた。 リーディング④は,教材をより深く読み込むことを目的としている。 図3-16は2年生のUnit 4「Homestay in the 図3-17 深く読み込むためのワークシート② 単元の終末で実施するパフォーマンス課題において,自分が活用したい表現に線を引きながら読む活動を行った。 中学校 英語科教育 19 ホームステイ先でのトラブルについて留学先の学校の先生がアドバイスをしているという内容の英文を読んで,そのアドバイスに納得できるところとそうではないところ,自分であればどのようなアドバイスをするかについて考え,ペアで意見を出し合った。図の生徒の記述を見ていくと,”Teacher’s Advice : Communication is important. You must tell your host mother ( about your trouble ).”という先生のアドバイスに対して,「誰かと関わる時は,コミュニケーションが大切だと私も思うから。」と同意していることがわかる。一方で,”You must not compare host families.”というアドバイスに対しては,「初めてのホームステイで不安なのに上手くいかなくて,他と比べてしまうのはしょうがない。」という反論をしている。そして,自分なら「『比べてはいけない』と言うのではなく,『比べてしまうのはしょうがないけど…』とフォローする。」と,まず相手を受け入れる姿勢を見せており,コミュニケーションにおいて一番大事な相手意識をもった考え方をしていることがわかる。 図3-17は2年生のUnit 5「Universal Design」で使用したワークシートである。 これら図3-16,17のような深く読み込む活動は,「聞いた」り「読んだ」りしたことをもとに「話す」「書く」という領域統合の視点において,非常に重要な役割を担っている。読んで得た情報の中でどの情報を取り上げるのか,またどの表現を活用するのかを考えながら,「話す」「書く」活動につながる読み方を設定する必要があると考える。 最後に,リーディング⑤の音読である。教科書に出てきた表現を自分のものとし,次のアウトプットへつなげる活動として,教科書の音読練習をシステム化したシステム音読を行った。詳細については昨年度の筆者の研究論文を参照にされたい(32)。このシステム音読には,家庭学習の定着に課題のあるB中学校においても家で積極的に音読練習に取り組んだ生徒が多く,その割合は87%に上った。授業中は,111 United States」で使用したワークシートである。 図3-16 深く読み込むためのワークシート①
元のページ ../index.html#21