001総教C030705H30大栢最終稿
19/32

図3-8 音と文字の一致を目的としたワークシート チャー,ピ,ピ,これや!」と小声で呟きながら,未習であるpictureの音と文字を一致させながらそのpictureが含まれる文の番号を書いていた生徒もいた。 取っているのが見られるが,このhave toはこの単元の新出言語材料である。本文の中に頻出しているものの,リスニングの段階で生徒にとっては未習である。しかし,図の枠線1では,文章の核となるその未習の言語材料がわからなくとも,ストーリーの大枠全てを前後の文脈から推測して聞き取れていることがわかる。この生徒に聞き取りを行ったところ,この段階で頭に引っかかった音「ハフトゥ?」という表現が,どのような意味,形式,機能をもっているのかを次のリーディング・ラウンドでより意識的に確認できたこと,さらにリスニングを通して文脈の中でとらえることができたため,新出言語材料の意味,形式,機能についてより理解しやすかったという回答を得た。 この活動において,指導者は生徒が聞き取りにくかったリンキングサウンドを把握し,それを次のリーディング・ラウンドで行う音読指導に生かすことができる。音読練習の際に,「この音をリスニング・ラウンドで聞き取れていない人が多かったよ。自分で作り出せない音は聞き取れないからしっかり自分で発音できるようになろう。」と,このラウンドをフィードバックの材料にしながら音読練習の充実化を図った。 <1年生における実践> 図3-7は1年生におけるリスニング・ラウンドの構成図である。 図3-7 1年リスニング・ラウンドの構成図 2年生との違いは,リスニング③の過程を追加したことである。第2章でも述べたように,小学校外国語活動において音声に慣れ親しんだ生徒たちが文字の導入にスムーズに移行できるよう,何度もリスニング・ラウンドで聞いた音声を文字と結び付けることを目的とし,このようなラウンド設計にした。 図3-8は音と文字の一致を目的としたワークシートの一部である。 ワークシートには順不同に英文が並べられており,生徒は聞こえてきた順番を数字で表していった。この時点で,生徒は新出語句については知識を要していないものの,既習の語句を頼りに音と文字を結びつけようと取り組んだ。中には,「ピク 図3-9は実践後に取ったアンケート結果である。 スムーズに進んでいない生徒が多いことに悩んでいた。しかし,アンケート結果からは,生徒たちが絵の並べかえなどで教科書の本文を繰り返し聞いた後に,文字で書かれた英文の順を並べかえるため,それによって音と文字が結びついたと実感している生徒が多数いることがわかった。とりわけ,京都市で実施している共通テストである学習確認プログラムのBasic Stage 1において到達目標に達していない生徒層(以下,C層)において,「音と文字が結びついた」(「とてもそう思う」「そう思う」合計)と回答した生徒は80%に上った。1年生の初期段階で音と文字の一致に困りを抱えやすいこの層の生徒たちにとって有効な手立てとなったということができる。 また,リスニング・ラウンドにおいて,2年生・1年生に共通したことは,それぞれの構成図にある①~②の二回,または①~③の三回だけリスニングをしたのではなく,絵の並べかえ及び英文の並べかえの際に,生徒から”One more, please.”というリクエストが相次ぎ,実際は構成図の倍以上の5回~ 何度も聞いた後に英文の順を並べかえたことで「音と文字が結びついた」と実感しているかどうかについてたずねた。実践校1年生の指導者は,音声から文字への移行が109 図3-9 音と文字が 中学校 英語科教育 17 結びついたかの結果

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る